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滞在型観光の選択肢 都市型滞在について

夏休みを控え旅行各社の北海道向け商品の予約状況は順調のようである。
これまでの格安ツアーや周遊型旅行からオーダーメード型の個人旅行の比重が高まりをみせている。レンタカー需要が多い夏休みには個人手配型旅行が集中する傾向がある。
また、滞在型の商品を扱う代理店も増えている。概ね1箇所に3泊から6泊程度を目安に滞在するが、滞在地は大沼、ルスツニセコ、キロロ、富良野、トマムなどスキー場を付帯する名の知れた大手系リゾートホテルでの滞在が目立つ。
率直な感想を言わせていただくと、リゾート地の長期滞在は大型ホテルと旅行代理店にとって都合がよいお仕着せ商品であり、旧態依然としたものといえる。
周囲に何もない立地環境で、夕食も自由に取りに行けないような所に長期滞在するのは相当な苦痛のはずだが。
北海道の観光・リゾート地は一施設(1社)に機能を囲い込む傾向がありそこで消費をしなくてはならない。飽きずに楽しめるとしたら地中海クラブ(サホロ)ぐらいであろうが、ここは好き嫌いがあり、GOとワイワイやっているのも2、3泊が限度ではなかろうか。
ただノンビリ過したい沖縄などと違って「目的」が多すぎると滞在型観光の成立が難しくなる。
もうひとつ最近の新しい商品としては、観光地ではなく、札幌、旭川、函館市内などの都市部に長期帯在するものが出てきている。4泊から6泊程度で同じシティホテルに通して泊まるものだ。マチなかに滞在するなんてとつまらないとかんじる人もいるであろうが、意外に使い勝手がよい商品といえる。
たとえば旭川滞在なら人気の旭山動物園、美瑛、富良野、大雪山、十勝岳、層雲峡など4日程度に分けて観光することができる。気に入ったらもう1回同じ場所を訪ねてもよいし、何もしない一日があってもよい。商品によっては他の観光地に宿泊することも可能である。夕食はリゾート地と違って毎晩、違った店を訪れることができる。旭川なら美味しい店も多く、1週間近くいれば相当な旭川通になれるであろう。
実はこういった旅からその地域のファンが生まれてくるものだ。著者は今から13年前の夏休み、釧路市のフィシャーマンズワーフMOOの前にウイークリーマンションを10日間、借りたことがある。短期間の旅行であるといつも心残りがあった。カバンを置いて、ゆっくりと自分の足で訪ねてみたかったのだが、これは道東(釧路)リピータになるきっかけずくりとなった。
その時は出来るだけレンタカーを使わずに公共交通を利用して周った。食事は当初、市場で新鮮な食材を購入した自炊を考えていたが、実際は朝は近所の喫茶店、夜は近所の居酒屋、それでも地元の人が立ち寄る店に顔を出すようになり、知り合いも何人か出来た。今は中心街の衰退で訪れた喫茶店すべてが無くなっている。
そこに暫く滞在することは観光客から一歩踏み出し、その地域に対し深い思いを抱くようになることを実体験した。
最近、滞在型観光と称して自治体も積極的にプログラムをつくっている。温泉地ならヘルスケアをキーワードにしたウエルネス型滞在も目に付く。先日、函館市の湯の川温泉が、初の集客交流事業として「はこだて湯の川オンパク」を今年10月から11月にかけて開催すると発表した。「オンパク」とは、“温泉泊覧会”の意。
これはホテル・旅館施設を使用した各種体験講座や身近な自然などを散策するツアーなどを集中して開催することにより、温泉施設に呼び込もうというものだ。もともと「オンパク」の本家は大分県の別府温泉である。
ターゲットは地元自民ということだが、将来的には体験型を併せた滞在型観光客の誘客を狙ったものであろう。別府とは温泉地としてのスケール、環境、歴史、文化度など背景が違い過ぎるので軌道に乗るか函館の地域性から考えて心配である。
「オンパク」は日本固有の温泉文化を味付けしたものだが、スローツーリズム、アグリツーリズム、ブルーツーリズムなどは欧州が源であり、日本人のライフスタイルには不向きな気がする。
日本人は人が集まらず、観光施設もないところに滞在するような旅に慣れていないのだ(欧州の発想では旅ではなく休養であろう)。
個人的には、旅行代理店や宿泊施設、自治体などが滞在メニューを用意する体験型よりも、前述した都市滞在型のように自分でプランニングをして気ままに動くスタイルの方がリピータ、ファンづくりにつながるような気がするがいかがであろうか。サポートはあっても「お節介」がない方がいい。
子供がいる家族連れには難しい面もあるが、欧米型のリゾート文化が育成できずにいる日本にとって日本流の滞在型観光があってもいいのではないであろうか。

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