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頑張る温泉地だがもうひと工夫を求める    

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上:川湯温泉街 真ん中の白い小さな建物が唯一の公衆浴場 下:廃業したホテル このような建物がいくつかある
先日、道東・川湯温泉(弟子屈町)へ訪れた。年1,2回訪れているお気に入りであるが、ここの特長は、近くの硫黄山から大量の硫黄泉が惜し気もなく湧出しているおり、温泉地としての資源に恵まれている
ことだ。。群馬県の草津と同じ泉質であり、いかにも効きそうなお湯であるが、温泉地としては地味な印象を受ける。
温泉街には十数軒の宿があり、中規模4,5階建てののビルが目立つ。昭和40年代から50年代前半頃に建てられたような宿が多く、老朽化も進んでいる。かつては賑わいをみせていたが、客室が百を越えるような大規模ホテルは無く、チェーン展開をしている宿も無いためマス・ツーリズムの流れから取り残され、観光客は阿寒湖やウトロなどに流れてしまうようになっている。調べるとこの10年で十軒近い宿が廃業か代替わりをしておりローカルな温泉地としては変動が激しい。
最近になって川湯温泉は、地域を何とかしようと温泉そのものを売り出す「源泉かけ流し宣言」を行なった。温泉旅行が団体から個人へシフトをし、ひと昔前の露天風呂ニーズから、最近は源泉・泉質ニーズへの高まりを受け、湯量と泉質に恵まれた川湯は追い風と判断して実施したのであろう。
各旅館の玄関には、お揃いの「源泉かけ流し宣言」の布製垂れ幕が飾っており、「外湯めぐり」のスタンプラリーも実施している。
今年6月には「第2回源泉かけ流し温泉サミットin川湯」が開催された。
このイベントは源泉かけ流しを売り物にしている全国の温泉地が集い、取り組みを紹介するもので、第1回は奈良県・十津川村温泉郷で行なわれた。今回は十津川温泉、新潟県・関温泉、大分県・長湯温泉、摩周温泉、パネリストとして熊本県・黒川温泉、宮城県・東鳴子温泉が参加した。
また、夏季には「源泉まつり」がロングランで開かれ、縁日などが連夜行なわれる。このように川湯温泉はホンモノ志向、健康志向で客足の回復に務めている。
川湯温泉に限らず、道内の中規模温泉地は苦戦を続けている。核となるような施設がない温泉は、地域そのものが存亡の危機に瀕している。
そんな中、川湯より一足先に動きだしたのが、上士幌町の糠平温泉である。糠平は、かなり前から深刻な状況であり、大型ホテルが次々に廃業した。かつては襟裳岬や知床観光の中継地として人気があったが、川湯と同様に中途半端な規模で団体依存、宿の特長もなかったため衰退してしまった。危機感を強めた旅館経営者は旅行会社頼みの営業をやめ、個人客重視に大きく方向転換した。
連泊者が好きな宿の夕食を楽しめる「味巡り」を始め、各宿は夕食客を増やそうと食事に工夫を凝らすようになった。北海道遺産に選ばれた旧士幌線のタウシュベツ川橋梁の人気も高まり、最近では糠平駅跡に線路を敷き、ミニ鉄道も開業させた。早朝散策ツアーや気球体験など早い時期から体験プログラムを取り入れている。
各旅館は個人客ニーズに対応するために客室や風呂を改造、手作りであるが評判を呼び、最近では客が戻ってくるようになっている。
著者は糠平温泉の試みに興味を持ち、何度か足を運んで泊まってみた。各宿涙ぐましい努力をしているのはよくわかるが、まだまだ見よう見まね黒川温泉をナゾっている状況であり、洗練された御もてなしというレベルには達していない。
川湯温泉の場合も「源泉かけ流し宣言」をして、その心意気を支持しているが、糠平と同様に暖かい目で応援している段階である。なので今のレベルで満足してもらっては困る。そこから先の魅力がないとそれだけではお客は呼べない。北海道全体にいえることだが、観光施策に個性がなく、真似が殆んどである。
第1回かけ流しサミットを行なった十津川温泉では、「なびきツアー」というものを実施している。「なびき」とは、世界遺産に認定された古道を歩くことによって心身再生をはかるスピリッチャル・ウオークであり
単なる山歩きや霊場巡りとは違うらしい。
スペインのサンティアゴ巡礼が最近、人気になっているが、己の人間性を高めるのが目的で、人材育成のプロがコーディネートをしているものだ。十津川ではこのプロジェクトを村の中心事業として、村民を巻き込んだ全村的なものを目指している。
十津川のセンセプトは独創的であり、地元の資産を活かすだけではなく応用をしている。時代ニーズを取込んでおり、話題性も充分である。
川湯や糠平温泉には、素材の良さを活かしながら、さらにそれを活用したここだけのモデルを作ってもらいたい。川湯は飲泉による療養、糠平は花粉症疎開を打ち出しているが、もうひとつ踏み込んだものを期待したい。

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