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「市営谷地頭温泉」が民間へ売却、「市営」だからこそこの温泉のよさがあるのでは

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市電谷地頭駅から歩いて数分の場所 近くには立待岬や函館公園など観光スポットも多い

10年ぶりぐらいに「市営谷地頭温泉」に行った。市電終点の谷地頭から徒歩で5分ほど。函館旧市街にあり、このあたり静かで、散策には適している。立待岬もここが下車駅である。市民や観光客にも親しまれ、道内の公共温泉としては異例の昭和28年創業である。

ところで、谷地頭温泉は民間に売却されることが決まった。このニュースは2009年の拙ブログで紹介したが、既に売却先の公募受付を始めており、公募した事業計画を審査するプロポーザル方式で選定することになった。

最低売却価格は土地、建物を含めて約5億1500万円、売却額は不動産鑑定評価額を基に算定し、対象はいずれも税抜きで、公衆浴場の建物などが約2億8500万円、土地(約7000平方メートル)が約1億7100万円、温泉の供給設備などが約5800万円で、すべて一括して売却譲渡する。

譲渡条件は●公衆浴場として5年以上継続して運営する●市谷地頭老人福祉福祉センターなど3施設への温泉の供給を5年以上継続する●5年間は第三者への譲渡、賃貸を原則禁止する—など。応募資格は3年以上の公衆浴場の経営実績がある法人などが対象で、銭湯以外にもホテル・旅館や福祉施設、フィットネス施設なども含まれる。

この売却額、かなりの高額である。また、譲渡条件も厳しい。「応募資格は3年以上の公衆浴場の経営実績がある法人などが対象」とあるが、新たに谷地頭温泉の経営に乗り出すところがあるであろうか。

管理人は小雨の中、電停から温泉まで歩いた。土曜日ということで混雑を予想したが、意外なほど空いており、入浴者は高齢者が目立つ。以前は客層も幅広く、もっと賑わっていた印象があったが市営温泉離れが進んでいるのであろうか。以前はなかったはずの路線バスも温泉の前まで来てるが。

入浴料は420円。函館市内は天然温泉を完備したスーパー銭湯などの温浴施設の激戦区で、入れ替わりも激しい。首都圏であれば、軽く千円はしそうな施設が500円以下で利用できる。泉質がよいところも多く、車の運転が出来る人であれば、複合施設を兼ね備えたスーパー銭湯に流れていくであろう。

スーパー銭湯は法的にもかなり優遇されているので、挙って参入するのであろうが、その割を喰らっているのが公共温泉である。道内では1990年代の「公共温泉ブーム」により、多くの施設が開業したが、今では売却や廃業が進んでいる。

谷地頭温泉は90年代に誕生した公共温泉とはかなり趣を異にする。まず、歴史があり、家風呂がない時代からの市民銭湯であったこと、連絡船のあった時代から旅人が旅の疲れをここで落とすなど、地域に根付いた温泉であった。現在は高齢者の利用が多いが、それも地域に根ざしている証拠である。

谷地頭温泉の場合、「市営」だからこそその存在意義があるのではないか。果たして、民営化されて同じ形態を維持できろうであろうか。にわか参入の公共温泉とは異なる「格」がここにはあると思う。函館市の文化のひとつと言ってもいいのではないか。

温泉に携わる人も市の職員であろうし、売却をすれば人件費の削減にも繫がる。ついでに市電の谷地頭線(十字街-谷地頭間)も廃止にならなければいいが。

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