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旅行雑誌の草分け「旅」が休刊、旅が「非日常」ではなくなったことで使命を終えたのでは

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写真左から創刊号(1923)、1963年7月号、1997年8月号*創刊号のみ復刻版

大正13年(1924年)に創刊された日本初の本格的旅行雑誌「旅」が、来年1月20日発売の3月号(通巻1002号)で休刊することが決まった。発行元の新潮社が21日に発表した。(11/21付 読売新聞

旅行雑誌の草分けである「」(新潮社)が来年の3月号で休刊する。最盛期の昭和40年代には20万部を越えたが、その後部数は減り続け、2004年に発行元のJTBが新潮社に譲渡。ターゲットを女性に変え、内容も海外旅行をメインにするなど刷新を図っていたが低迷が続き、2009年から隔月刊となっていた。

管理人は大変お世話になった雑誌である。おもに中学生から高校生時代、また社会人となってから1988年頃からJTB発行の最後の頃にかけて愛読をさせてもらった。70年から80年代にかけては国内から海外までテーマが幅広かったが、ふたたび読みはじめた頃からは鉄道やバスといった乗り物、温泉、ひとり旅、北海道など内容が「JTB時刻表」愛読者が好みそうなテーマに変わった。マニア度は高くなったが、著筆の顔ぶれは豪華であり、信頼性も高かった。管理人も何度か投稿させていただき、すべて掲載されたが懐かしい思い出である。

「旅」は1923年創刊、戦時中の休刊はあったものの、その間1003号まで85年続いたことになる。管理人はバックナンバーをコレクションしているが、その時代背景、文化・風俗などが見れて大変面白い。時刻表からも世相が垣間見れるが、「旅」はストレートにそれが伝わってくる。

旅行雑誌はかなりの数が消えた。専門誌に代わって「サライ」や「自遊人」のような大人向けの趣味誌がその受け皿になっている。鉄道雑誌でも同様である。先日、「旅と鉄道」が復刊されたが、北海道観光マスター氏がそれに関し、鋭く、適確な書評をでされている。

女性誌も以前にくらべると旅特集が減っている気がする。やはり、インターネットが旅情報の主役となり、一方通行の情報では限界があろうであろう。そういう意味では「旅」は一定の役目を果たしたと考えられる。

しかし、新興の「旅ガール」(エイ出版)は交流型でネットとの融合を図りながら実用的な内容で健闘している。「旅」は海外がメインであったが、「旅ガール」は身近な国内であり、このあたり「旅」は読み物、「旅ガール」は山ガールの「ランドネ」同様に実用書に近く、”アンノン”の流れを引いているとも云える。新潮社とエイ出版の方向性の違いがよく見える。

40年前に「anan」が小京都ブームを起こし、若い女性たちが挙って旅に出たが、それは当時あまり知られていなかった場所を紹介し、それが新鮮であったことがムーブメントを引き起こしている。

「旅」休刊の背景には、ネットの普及やレジャーの多様化、若者の旅離れなどもあるが、旅が非日常的なものではなく、身近になったことも大きいと思う。新幹線などの発達で所要時間が大幅に短縮、安くなった航空機や高速バスなど選択肢も増加、女性が安心して泊まれるホテルが増えるなど旅の質が変わってきている。

遠くに出向くことが特別なことではなくなり、機会も増えた訳だが、たとえばその目的が都会にコンサートや買物へ行く、また、旅行といってもお手軽な温泉に1泊旅行など旅が本来持つ感動とは異なるお手軽なものになっていると思うが、それが今の旅なのであろう。

管理人はひとり旅に出ると開放感と孤独感の中、「遠くへ行きたい」のメロディがよく浮かぶ。あの詞、あのメロディは雑誌「旅」が長年かけて育んできたメッセージではなかろうか。

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