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「ブラック企業」と旅行・観光産業

最近ブラック企業という言葉をやたら耳にする。本日発売の「週刊文春」には、予てからそういう評判であった「ワタミ」のことが書かれている。ワタミの競合である大手居酒屋チェーンMはかつてブラック企業の代名詞のように言われ、渡辺会長をそれを反面教師にやっていると聞いたことがあるが、どうなってしまったのであろうか。

また、先日国会中継をカーラジオで聴いていると、共産党の議員が「ユニクロ」と実名入りで、労働時間の長さとノルマの厳しさや離職率の高さ、精神を病んでしまった社員の多さからブラック企業と名指していた。答弁した首相も否定することなく、「そういった事実があるのか調査をする」と答弁しており、ブラック企業問題は国民的な問題となっているようだ。

ブラックといえる企業は今に始まったことではなく、管理人が就活(当時はそんな言葉がなかったが)をしていた当時から存在していた。今ほど企業倫理やガバナンスに煩くなく、情報も少なかった時代なので、手持ちの情報と勘でブラックかどうか判断するしかなかった。

それでもやたら新入社員を取ったり、歴史の割に平均年齢が若く、30歳までは待遇がよい会社は学生ながらも判断できた。また、会社案内を開くと、いかにもといった社長が登場し、イメージ優先でやたら絢爛豪華、実態が見えない会社などは訪問をしなくても、データと会社案内で概ねわかったものだ。

当時、誰でも入社できたといわれたのは、商品先物取引会社やマンション販売大手のD、着物販売のS、OA商社のO、力士のCMで有名であった健康布団のMなど思い出すが、面白いことに今でもブラック企業として残っているところがいくつかある。30年近くブラックのままなのだ。ブラックの基準は曖昧なので、今、そういう風に言われている企業が本当に「悪」かとは一概にはいえず、「社風」として醸成された面もあるであろう。

それでもそういった会社へ行った同級生はいたが、判断力のないおバカなのか、わかっていながら人生観の違いで選んだのかはわからない。これほど情報が集まりやすくなった現在でも、知らずにブラック企業を選ぶ若者を見ていると、就職難は差し引いても、その眼力のなさは時代に関係なく、本人の資質の問題であろう。

 

ところで観光(旅行)ビジネスのブラック企業とはどこであろう。申し訳ないが、旅行会社やホテルチェーンなどは、世間が言うブラックの基準にけっこう当て嵌まってしまうものが多いのだ。

旅行会社では、海外旅行で急成長をしたHが槍玉に上がっており、ノルマの厳しさや残業の多さ、離職率の高さなど問題になっている。このHに限らず、旅行会社は最大手のJからKやNまで登場してくるが、これはブラックというよりは業界の特性もありそうである。

まず、労働集約型産業であり、手数料商売の薄利多売が基本。人件費が占める割合が高く、外的要因によって業績が左右される不安定ビジネスである。当然、休日出勤も多く、労働時間は長い。他の部署や支店など社内間で顧客の取り合いをするなど熾烈であり、完全な体育会系的な世界である。そして今は顧客自ら予約をする「代理店抜き」の時代で業界は先細りである。

旅行会社は就職学生の長年の憧れだが、現実と理想のギャップは今始まったことではなく、管理人が就活をしていた時代からあった。こちらは何となくその正体が見えており、旅行好きの管理人でも旅行会社へ行く気はなかった。

旅行会社がブラックだと思うのであれば、考え直した方がいいであろう。元々、そういう業界体質ということを事前に知っておくことが重要だ。但し、離職率が高く、使い捨てにするような会社は、人気があっても行くべきではない。

ホテル業界はどうであろうか。都市型ホテルや外資系ホテルは求人自体が多くなく、業界経験者優先であるが、ビジネスホテルチェーンや大手温泉ホテルなどは新人や未経験者の採用が多い。

ビジネスチェーンというと、TIやAPなどいかにもブラックというところを思い浮かべてしまうが、そうではなくても、旅行会社同様に休日出勤が多く(仕方がない)、年間休暇日数が少なめ、その割に給料が安い、入社後3年以内の離職率が高いなどの傾向があるようだ。

また、北海道の温泉ホテルチェーンなどは山の中の寮に缶詰にされるタコ部屋状態、給与も極端に安く、モチベーションも湧かないような会社もある。

問題なのは、ワンマン一オーナーによる独裁や一族による横暴経営をしている会社だ。経営者の愛人や腰巾着が権力を握って恐怖統治をしているような独裁経営企業である。社員に対して「はたらかせてやる」といった意識で、労働組合など勿論ない。経営者の哲学や思想などを押し付け、それを受け入れない社員は容赦なく解雇するような会社だ。

カリスマ性はひとつ間違えれば、暴君・恐怖政治となり、紙一重なのである。

ホテルチェーンの多くはオーナー企業や同族企業である。勿論、開かれた近代経営をしているところもあり、最近は増えている。どこがよい、悪いとは一概にはいえないが、そこへ就職を希望する者は会社との相性や仕事観といったものが合うかが重要かもしれない。面接をして、社内を見せてもらえば、雰囲気で合っているかどうか何となくわかるのではないか。それがわからない人間は客相手のホテル業には向いていないであろう。

ホテルや大手温泉ホテルも旅行会社と内情はよく似ている。また、槍玉に上がっている大手居酒屋チェーンや各種量販店なども労働集約型のサービス産業なので体質は近い。申し訳ないが、社員の権利や労働環境という意味では遅れていると言わざるを得ないか。

特に独裁オーナー企業にその傾向が強いが、業界の質向上のためにも、一定のガイドライン策定など国がもっと口出しをすべきであろう。

使い捨てだけは許されない。

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