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JR北海道、国鉄分割民営化まで遡らないとコトの本質が見えてこないのでは

JR北海道で今月7日、上野行きの寝台特急「北斗星」の回送列車を札幌駅へ移動させようとした男性運転士(32)が、自動列車停止装置(ATS)を誤作動させ、そのミスを隠すためにATSのスイッチをハンマーで壊していたことが、JR北海道への取材でわかった。(9/17付 読売新聞

このニュースを聞いた時、あまりの異常さに唖然とし、JR北海道が抱えている問題は尋常ではなく、とてつもない深い闇があることがわかった。思い出すのが、2005年に起きた福知山線の脱線転覆事故である。死亡した運転手が、遅れを回復するために、制限速度を大幅に超えた状態で急カーブに突入したと云われているが、その背景には遅れれば上司から叱責され、場合によっては乗務禁止や停止、日勤教育という過酷な研修を受けさせられる実態が報じられた。

今回の北斗星機関士も叱責・ペナルティの恐怖からパニックに陥り、あのような異常行動を取ったのではないかと想像するが、そこまで追い込まれているとすれば極限的な精神状態であり、そうなっているのは果たしてこの機関士だけなのであろうか。多くの社員が過ストレス状態に陥っていると思うが、大変危険なことである。

それにしてもJR北海道の花形列車である「北斗星」の機関士が、自分の分身のような機関車のATSを叩き壊すとはあまりにも酷い。花形列車を運転しているという誇りはないのであろうか。プライド高き鉄道マンの姿は過去のものになってしまったのかもしれない。

これまで管理人はJR北海道の乗務員の対応について何度か拙ブログの中で指摘をしてきた。何テーマかあるが、おもだったものを紹介すると

■「青森から函館へ移動中に震災に遭遇 危機管理は特別なものではない」(2011.3.14)

■「「Sおおぞら」火災事故 緊急時に問われる乗務員の判断力」(2011.5.30)

■「石勝線「Sおおぞら」で往復とも大幅遅延アクシデントに遭遇、JR北海道は現場の改善を」(2011.6.14)

おもに車掌を中心にした乗務員について書いているが、運転士であろうが、内勤であろうが、求められるものは同じである。JR北海道という会社、昔は国鉄であるが、民営化によって公益企業の悪い部分だけ残ってしまったようである。郵政にしてもNTTにしてもそうだと思うが、優先させるのは職場のルール(掟)であり、それにがんじがらめにされて、社員はいつの間にか狭い世界でマインドコントロールされている。特殊な上下関係と職場環境、硬直した指示系統、事なかれ主義など民営化されても親方日の丸体質は維持されており、利潤追求をする環境になったことで、今度は守らなくてならないものが失われて行ったような気がする。

JR北海道は国鉄民営化の際、極端な合理化によって安全管理がおざなりにされてしまったのではないか。多くの者(特に国労組合員)が職に就けず、中曽根行革の犠牲者(弱い物いじめ)とも言えないこともない。採用の中断にによる技術の伝承の断絶、増える外注業務、 過酷なローカル線乗務や駅の無人化など社員の置かれている環境は厳しいと思う。

しかしながらこの状況、大なり小なりJR各社共通している。 社内体質でいえば、国鉄時代の悪癖を改善するチャンスもあったと思うが、むしろ悪い方向へ行ってしまった。JR北海道はJRタワーに代表される不動産事業で辛うじて黒字化して体裁を保っているが、これらは鉄道事業の赤字補填であり、多角化や合理化により、むしろ鉄道マンのプライドが失われてしまった気がする。郵政同様、国の管理下における民営化のための民営化であったため、体質を変えることが出来なかったのであろう。

国鉄では6つの地域会社と貨物会社に分割民営化されたが、郵政三事業では事業ごとに分割民営化し地域ごとの分割は行われなかった。これは郵便事業は鉄道事業に比べて日本全国均一のサービスを行うことが重要視されているためということだが、管理人は鉄道こそ、全国ネットワークの維持が必要であったと考えている。国民インフラを支える公益企業である以上、民営化後も「採算が合わないから止める」の一言では済まされないはずだと思うが。

国鉄民営化はイギリスなどを参考にしているが、その後、欧州各国で実施された民営化で、分割が行われた国は少ない。それは日本での矛盾を見たからである。

JR北海道の一連の不祥事は国鉄分割民営化から始まった根深いものであると考えている。今回の件で見て思い出すのが、やはり東電である。 硬直した組織が一度、綻びると次から次へとボロが出てくる。管理人はJR北海道は東電と共に今は国の管理下に置いてもいいと思っている。その間、職員を増やすなりの改善処置を施して、JALのように再度、民営化してもいいのではないか。

かつて福井県にあった京福電鉄という私鉄は半年間に正面衝突を2回起こし、国交省から運転停止命令が出た。結局、京福電鉄は廃線を決めたが、その後、地元資本のえちぜん鉄道に変わり、今では地域の信頼を回復し、利用者も増やしている。京福電鉄はもともと経営が脆弱であり、問題も多かったようだが、経営が変わったことで生まれ変わることが出来た。大JRと中小地方私鉄を同じ土俵では語れないが、JRの枠組みから飛び出すぐらいのことをしない限り、現状では厳しいかもしれない。

もう一度、プライドが持てる鉄道マンの職場になることを切に祈る。

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