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北陸道の夜行高速バス事故 バスドライバーが誇りをもてる職業に

富山県小矢部市の北陸自動車道小矢部川サービスエリア(SA)で3日早朝に起きた夜行バス事故を受け、東北運輸局は4日、道路運送法に基づき、死亡した小幡和也運転手(37)が所属する宮城交通仙台南営業所(宮城県名取市高舘熊野堂)を特別監査した。3日に引き続き、同社の安全管理の状況を調べる。(3/4付 河北新報

またしても大きな事故が起きてしまった。今回、驚いたのは東北地方最大手のバス事業者で全国的にも知名度がある名鉄系の宮城交通が事故を引き起こしたことである。利用者も”ミヤコー”なら安心と思っていたであろうが、大手の二人乗務の事故なので安全対策の限界も感じられてしまった。

昨年8月からの法改正で高速バスは、これまでの「乗合型」と「ツアー型」が一本化され、参入基準もかなり厳しくなった。そのためツアーバスの3分の2は事業から撤退をし、安全面では格段に進化したはずであり、管理人も遅まきながらツアーバスが規制されたことを評価していた(運賃が高くなったという不満は利用者の間で多いが)。

実は今回の事故で気になったことがある。それは運転手の待遇と社会的な地位である。最近、メディアでバスの運転手不足と重労働、低賃金がよく報じられている。

現在、バスの運転に必要な「大型2種免許」の保有者は約102万人で15年前と比べ20万人減っている。また、乗合バスの運転手もピーク時(1975年)から2万人減少して、2010年現在、8万人である。運転手が足りないために労働シフトも厳しくなり、重労働につながっており、乗合バス運転手の年間労働時間は2544時間と全産業と比べ約400時間長い。それに対して、平均年収は446万円と全産業男子の平均530万円を大きく下回っている。この446万円は乗合バスであり、地方の中小バス会社や貸切事業者は300万円以下が当たり前となっている。さらに運転手の高齢化も進んでおり、平均年齢も48・5歳と全産業と比べ6歳も高くなっている。

こうなった背景には路線バス事業者の慢性的な赤字があるが、かつては国の保護政策があり、補助金や助成金で路線と会社が維持されていた。ところが2000年初頭の規制緩和により、バス事業への参入が自由化され、バス会社への補助金も大幅に削除された。そのため、バス会社はリストラを進め、運転手には大幅な給料ダウンを打ち出した。中には半分以下というところもあり、多くのバス会社で働き盛りの良質なドライバーが職場を去って行った。

バス運転手の待遇には格差があり、都バスや大阪市営バスのような大都市公共系では年収が700~1千万円近くになるのに対し、地方の路線事業者では400万円程度。貸切となると2~3百万円台がふつうである。東京都や大阪府などは、民間並みにということで大幅なカットや参入の自由化などで業界の"相場”を下げたが、問題なのは業界全体の賃金が低下してワーキングプアに近い状態になっていることである。管理人は当時の橋元知事や石原知事がバス運転手は民間と比べ、もらい過ぎとということで大幅に賃金を下げたが、それ自体が同じ自治体職員である運転手に対する差別であり、モチベーションを下げているのではないかと思ってしまう。確かに貰い過ぎは否定できないが、後に採用された運転手や新規参入者の賃金は非常に安く、格差を生んでしまった。

かつて、乗合バスの運転手といえば、地方では人気の職種であったときく。国鉄職員と同様、それほど給料はよくないが、安定しており、地元を代表する企業なのでステータスもあったようだ。「うちの嫁を○○バスなら。。。」といった具合に安心できる職場であったバス会社が今はそうではなくなっている。大手バス会社でさえも大幅な減収により、生活していくのが大変なようだ。

今回の事故とは直接関係ないが、もう一度、バスの運転手が子供や地域の憧れとなり、プライドを持てる職業になってくれる日が来ることを望む。低賃金格差社会の弊害はとんでもない場面で災いをもたらし、路線バスの切捨ては更なる中央一極を進めて、日本を歪なものにするであろう。もっと地域と人を大事にしてくれる世の中になってもらいたいと思う。

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