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テレビ東京「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」を検証

最近、キー局幹部が恐れている番組は土曜日の特番枠でOAされるテレビ東京系「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」。その理由は脱力感漂う、ゆる~い旅番組にもかかわらず毎回、叩き出す高視聴率だ。テレ東が東京・虎ノ門にあることから、「虎ノ門の奇跡」と呼ばれている。(5/25付 日刊ゲンダイ

太川陽介と蛭子能収、ゲスト女性タレントによる「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」が好調のようだ。このローカル路線バス乗り継ぎの旅のシリーズ、管理人はほぼ全部観ているが、明らかにこれは仕込んでいるなという場面に出くわすこともある。それでもこれはバラエティであり、演出だとしても許される範疇だと思う。制作会社はコースを事前に入念に下見し、リサーチしているであろうが、路線バスに関する情報はネットが進んでもいまだ少ない。担当者はけっこう苦労していると思われ、そのあたりが結果的に力作となって視聴者に支持されているのではないか(裏が透けて見えるような安っぽい旅バラエティとの違いは明らか)。

強いて苦言を述べるとすると、バスから降車する際、まごつくことなく、お釣もなく料金を支払うシーンである。本来なら整理券と料金表の照し合わせなどで手間がかかるはずだが、ここはスタッフが事前に支払っているのであろう。この番組に限ったことではないが、バス旅番組を見ているとどれもがスムーズに料金を支払う。このあたりのディテールは再考した方がよいであろう。また、宿探しの場面でなかなか今夜の宿が見つからない時、スタッフはどこに泊まるのだろうかなどと考えてしまうが、コースを見ながらスタッフが泊まりそうな場所を推理するのも面白い。

こういう番組を見て、少しでも路線バスに興味を持ってもらい、旅の手段にバスをはじめとした公共交通を利用してもらいたいと願うが、現在の地方の路線バスは本数も少なく、運賃も高い。路線に関する情報も少なく、バス旅は"秘境旅行”に近いような状況である(だから魅力があるのだが)。

実は「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」の番組、過去にそっくりなものがあった。それは1980年代中頃から1990年代にかけてTBS系の「そこが知りたい」という番組の中で、年に何度か特集が組まれた「各駅停車路線バスの旅」である。旅人は何人(何組)かいたが、いちばん長かったのは俳優の鈴木正幸と温泉紀行作家の美坂哲男氏、薬袋美穂子さんの組合わせではないか。多分、1985年から1990年頃までこのトリオで旅していたと思う。

おじさん二人に若い女性という組合わせが、テレ東の路線バス番組もこのパターンを踏襲している。鈴木正幸が太川陽介であり、美坂さんが蛭子さん。美坂さんを知らない方は多いと思うが、岩波書店を定年退職した後、温泉ライターとなり、出演当時は70歳近くにはなっており、道中、迷惑をかけることもあるという展開だった。ちなみに美坂さんは管理人を温泉好きに導いてくれた「師匠」でもあり、とても懐かしい方である。晩年、新橋で偶然お目にかかり、挨拶させていただいたが、10年ほど前に亡くなられている。紅一点で性格もよさそうであった薬袋さんも若くして鬼籍に入られたのも残念だ。

テレ東のローカル路線バス乗り継ぎの旅の番組では、高速バスや都市間バスを利用してはいけないというルールがあるが、TBSの番組では縛りはあまりなく、ドキュメンタリーに近い内容だったと記憶している。当時は高速バスは少なく、まだまだ路線バスのルートや本数が多かった時代。今よりはバラエティに富んだコースを選択できたであろう。20年少しの間で路線バスを取り巻く環境は激変している。

実は管理人のところにもバス旅番組の企画が舞い込んだことがある。テレ東の路線バス乗り継ぎが人気ということで、とある制作会社からのオファーであったが、ローカル路線バスの終点旅というテーマで企画書を作らせていただいた。単なる終点ではありふれており、宮脇俊三氏は「ローカルバスの終点へ」という著も出されている。管理人は道路も同時に尽きる場所ということで考えた。某テレビ局にも同席したが、諸般の事情で実現しなかった。2年ほど前の話だが、道内の出版社から同様な内容の本を出す予定でペンを進めているところであった。その出版社の許可を得て企画書を作ったが、肝心の本の方が今度はこちらの都合で途中になってしまっている。これから出版できるかどうかはわからないが、入念に取材をしており、すでに廃止になった路線も多いが、世に出せる機会があればいいと思う。

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