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「女子と鉄道」酒井順子と宮脇俊三さん

女子と鉄道 女子と鉄道
酒井 順子

光文社 2006-11-21
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おすすめ平均

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最近、読んだ本のなかに「女子と鉄道」(酒井順子著・光文社)というものがある。
本のキャッチが、”茶道、華道、鉄道!女子にも乗れる鉄道入門”ということで、山手線内外完乗からローカル線試乗、特殊な鉄道紹介、通勤電車の痴漢や鉄研に関することなど多岐な鉄ネタを紹介しており、これまでの鉄道エッセーとは全く違った雰囲気に仕上がっている。
女性、鉄ちゃんをはじめ鉄道に興味がない人が読んでも楽しめる内容だ。
著者の酒井順子は”30代・未婚・子ナシ”の女性を描いた「負け犬の遠吠え」で、”負け犬ブーム”を作ったことで知られているが、女鉄ちゃんとは知らなかった。
作品の冒頭に彼女が故・宮脇俊三さんのファンであることを告白している。読んでいくにつれ宮脇氏を思い出させてくれる箇所がある。
彼女の辛口は相変わらずだが、淡白そうで観察力鋭く、鉄道に対する愛情をかんじる。また、文章が上手くて品がある。このあたりは宮脇さんとの共通点であり、影響も受けているのであろう。やや文章にクセがあり、句読点の使い方が独特なので最初は抵抗をかんじるかもしれないが。
さて作品を読んで、女鉄ちゃんと男鉄ちゃんとは鉄道に対する見方が違うことがわかった。酒井順子独自の視点かもしれないが、多分、女性は目的からして違うのではないか。想像だが、女性はシンプルに乗ることだけを楽しみにしており、ガツガツしていない。あまりに前知識が多すぎると旅をしていても落ち着かなくなる。その点、女性は情報へのこだわりが少ないような気がする。
また、作者は最近、鉄道好きと思われるひとり旅の女性が増えてきたといっている。確かにそれはかんじる。勿論、昔からひとり旅好きの女性はいたが、最近は年齢が以前より上がり(30代ぐらいが平均でシニアも多い)、リピータも多い気がする。
その世代の女性はイメージからすると伊豆・箱根の高級旅館やスパがあるホテルなどを好みそうだが、すべてがそうではないであろう。かなり目が肥えている世代であり、ものの良し悪し、本質が見抜ける年齢でもある。違ったタイプのスタイルの自由時間を使い分けることも可能であろう。
ひとりの鉄道旅行は、誰にも邪魔されず、自己解放ができる贅沢な時間である(と思う)。受動的な開放感とでも言おうか、その悦びを知る女性が増えてきているのであろうか。
「女子と鉄道」、装丁のデザインがいい。まさに女性のものだが、この作品の購買層は男女どちらが多いにかも興味がある。書店の鉄道コーナーでは平積みしてあったが、鉄道書籍の購買層と酒井順子の「距離感」が何ともいえずいい。
また、本の最初には米坂線、最後にはわたらせ渓谷鉄道を紹介している。米坂線は宮脇俊三さんが終戦を迎えた日に乗車していたエポックな線。わたらせは、国鉄全線を完乗し、最初に出版をした「時刻表2万キロ」という名著があるが、そのなかで最後に残った乗車区間が、旧足尾線、今のわたらせ渓谷鉄道なのである。
それに敬意を表し、最初と最後に持ってくるあたりはニクい。終わりのタイトルも「旅の終わりは、宮脇さん」(笑)。
宮脇さんは全く新しいジャンルの紀行文学を生み出した。彼女もこれから何をやってくれるか楽しみである。
酒井、お前やるなあ、といったところである。

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