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鶴雅グループ大西会長の言葉からかんじた北海道観光

7日朝放映されたNHK「経済羅針盤」のゲストが阿寒湖・鶴雅グループの大西雅之代表であった。鶴雅グループは、この数年で人気ホテルグループに成長、阿寒湖だけではなく、道東を中心に網走やサロマ湖などのホテルも買収し、勢力を拡大している。
管理人は大西代表とは面識はなく、間接的にその仕事ぶりや人柄など聞いていたが、テレビで見た印象は、道産子らしい朴訥さと誠実さ、情熱を兼ね備えた魅力的な方と拝見した。鶴雅の高級路線や他ホテルのM&Aを実行しているので、豪腕経営者という先入観があったが、星野リゾートの星野社長とはかなりタイプが違っていた。
阿寒湖鶴雅はかつて阿寒グランドホテルといった。20年位前まではパッとしない宿で、ホテル阿寒湖荘や阿寒観光ホテル、カラカミ系チェーンの後塵を拝していた印象だ。JTBの調査で送客が停められる58点まで評価が落ち、どん底からスタートをして今の地位を築いた。このあたりは、いろいろなメディアで紹介されているので省くが、鶴雅が何で人気宿になれたのか管理人なりの視点で考えてみた。
まず、時代を逆手に取ったことが挙げられる。阿寒グランドホテルが「送客停止」にされた1980年代中頃は、バブル突入前夜、大型豪華施設が相次いでつくられていた時期である。しかし、そんな余裕がない大西氏のホテルは、周囲を尻目にソフト面を含め出来うる範囲から改善をしていった。そしてバブルが崩壊し、旅行ニーズが変わった90年代、他所が試行錯誤している最中に攻勢に出た。建設コスト、人材確保、買収等などに有利な時期である。また、資金がない分、ソフト面に力を入れたのが後になって幸いしている。このあたりの感性は銀行マンとしての経験も大きいであろう。ある種の時代の隙間を突いている。
二つめとしては、個とリピータを意識したことである。阿寒湖は一見さん相手の典型的な物見遊山の観光地であった。北海道の観光地に共通するステレオタイプの宿ではなく、何度も来たくなるような個性的な客室と頻繁な改装、飽きのこない食事などこれまでの道内大型宿にはなかった一歩踏み込んだサービスを行うことでリピータづくりに成功した。20年前に58点の落第点をもらい「送客停止」にされた失敗を源に、旅行会社、利用者共にウケがいい戦略性が高いホスピタリティを構築している。
三つめは、地域に根ざし、地域と発展、共生していることである。インタビューの中でも大西代表は、「観光地をまちづくりの観点で考えないと絶対に生き残れない」と言っている。当たり前のように聞こえるが、これを実践できているところは非常に少ない。
このサイトで何度も道内観光地・温泉地の問題点として、巨大温泉ホテルなどは、一歩も外へ出ないで、館内で完結できる仕組みをつくっているので宿泊者は街へ出て楽しむことなく、温泉街などが形成されにくいことを言った。
巨大ホテルがないところでも、それぞれの宿が囲い込んでしまうので、なかなかひとつにまとまらず商店街(土産物街など)や家族経営の小旅館などは衰退してゆく。観光地をマチ、コミュニティという概念で育ててゆかないと地方都市と同様に格差が進み、ゴーストタウン化してゆく。一事業者のエゴではなく、地域が開かれた共同体であるという発想が必要であると大西代表の言葉からかんじた。
阿寒湖は素晴らしいリソースがありながら、どこか時代の取り残された悪い意味での昭和チックな観光地であった。管理人は鶴雅の路線をすべて支持している訳ではないが、大西代表のやり方には総論賛成であり期待している。氏の手腕による阿寒湖、また、道東、道内観光全般の変貌を見守ってゆきたい。

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