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新世代型カプセルホテルが宿泊の常識を変えるか

カプセルホテルのようで、カプセルホテルでない。そんな宿泊施設が全国で増えているのをご存じだろうか。その名は「ファーストキャビン」。全店の平均稼働率が90%を超えているホテルは、どのような特徴があるのか。(11/1付 IT media

このところのホテル不足によって大都市部では建設ラッシュが続いているが、その中でジワジワ増えているのがカプセルホテルである。かつてカプセルホテルというと終電を逃した酔客の御用達で、サウナを併設した盛り場にあるものというイメージが強く、宿泊施設の中では特殊な存在であったと思うが、この6-7年で大きく変わってきている。

記事にある「ファーストキャビン」はご存知の方も多いかと思うが、カプセル型の寝台ではなく、飛行機のビジネスやファーストクラスなどのアッパークラスを意識したものを展開している。

カプセルホテルは旅館業法では簡易宿泊施設となり、カギをかけることができない。入口はカーテンで仕切られているだけであるが、キャビン形式にしたことでカプセルのような閉塞感がなく開放的、女性客でも抵抗がない造りにしてある。
出店場所もこれまでの盛り場だけではなく、たとえばオフィス街近くや空港内など新たな需要が見込めそうな場所に進出している。
私は羽田空港の第1ターミナル内にある同施設をデイユースで使ったことがあるが、清潔で静か、寝るだけであれば十分という印象であった。

「ファーストキャビン」は最近ではJR西日本と提携。今度は飛行機ではなく、鉄道(寝台車)をイメージしたものを造ろうと元JR施設を利用した「ファーストキャビンステーション あべの荘」を2017年10月28日にオープンしている。寝台車(トワイライトEXP)を意識したものというが、同様な施設は昨年、JR東日本の系列会社が、「Train Hostel北斗星」を馬喰町にオープンしている。こちらは本物の北斗星車両で使用された寝台を用いた本格派であり、なかなかの人気になっている。

ファーストキャビンの名前が知れ渡り始めたのは2012年頃、ちょうど世の中がデフレで節約志向で不動産の下落、手軽な宿泊(?)といえば既にネットカフェは市民権を得ていたが、それよりも質が高くて安心、女性でも泊まりやすいというあたりが受け入れられたのであろう。
その後、インバウンドが隆盛となり、大都市部のホテルが取りずらくなると国内ビジネス客や新たに訪日客の需要も掴み、いっきに来た感じである。海外にはない形態であり、わざわざ泊まってみたいという訪日客も多く、需要を後押ししている。最近ではカプセル型寝台とゲストハウスを組み合わせ、インバウンドをターゲットにしてホステル型のものもいくつか登場している。

もともとカプセルホテルは建築家の故黒川紀章氏がカプセルハウスを大阪万博の際に発表、実際に都内銀座の外れににはカプセル型マンション(中銀カプセルタワー)が建てられたが、これがルーツになっているようである。

この「ファーストキャビン」社長へのインタビュー記事を読むと、地方進出も視野に入れているという。地方都市の場合、チェーン系ホテルと地場系ビジネスホテルとの格差がどんどん開いてきている。体力がなく、設備投資などに余裕のない老朽陳腐化した地場系ホテルに代わって、カプセル型が進出ということであろうが、投資が少なくて済むカプセル型の全国資本の地方進出は、一時期の宿泊特化ホテルの建設ラッシュと同様で、その地方に利益をもたらさないのではないかという危惧もある。
反面、地場の古いビジネスホテルが最先端のカプセル型にリニューアルをすれば利用者が戻ってくるという期待も持てる。簡易宿泊施設といっても改装には、ある程度の資金が必要であるが、ビジネスユース以外でもネットカフェやゲストハウスを利用するような旅行者を呼び込むことは可能であろう。

特に日本人は個室志向が強く、欧米人が好む相部屋のゲストハウスが苦手という人も多い。カプセル型のような「準個室」であれば新たな需要を生むことはできそうだ。
また、スキー場など季節稼働型の観光地やレジャー施設での需要も見込める。
1980年代前半まではスキーヤーズベッドといって2段式の相部屋がよく見かけられたが、手軽な料金で泊まれればスノーリゾートの客足回復につながるかもしれない。

カプセル型に限らず、最近の一般向け簡易宿泊施設のトレンドとしては、寝るスペースは最低限、その代わり、飲食施設などパブリックスペースを充実させ、交流型にするところが増えている。長期滞在も可能であり、カプセル型が新たな観光需要を引き出す可能性は高いのではないか。

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