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インバウンド隆盛の陰に日本の失われた30年があり あまりに安過ぎる観光物価

海外旅行好きならおわかりのように、欧米でもオーストラリアでも、ランチで2000円前後はごく普通。1000円以下、場合によってはワンコインでランチが食べられる日本のほうが特殊であり、外食における金銭感覚が我々とは違うのだ。(6/2Newsポストセブン

訪日外国人が増えたのは、日本が「格安天国」だからではないかという指摘。おっしゃる通りかと思う。インバウンド隆盛の昨今、”cool japan”などに代表される日本文化が世界中に浸透し、ファンをつくったと思っていられる方も多いであろう。勿論、それは間違いではないが、そういったファンは以前から居り、今にはじまったことではない。むしろ訪日客の所得の上昇やLCCの拡充などで旅行がしやすくなったことが大きい。その中で日本は物価が安く、旅行目的地としては好都合な場所と考えた方がいいのではないか。

日本と海外の給与比較をするデータがある。バブルピーク時の1990年の平均給与は425万2000円。その後、1997年をピークに下がり始め、2017年は432万2000円となる。1990年からの27年間で、上昇した平均給与はわずか7万円ということになる。1997年を100とした場合、欧米先進国の「実質賃金指数」はスウェーデン138.4、オーストラリア131.8、フランス126.4、イギリス125.3、ドイツ116.3、アメリカ115.3で日本は何と89.7とマイナスを記録している。1997年から2016年までの19年間で、先進7カ国のアメリカやドイツでも1割以上上昇しているにもかかわらず、日本は1割以上も下落し、先進国の中では唯一である。

また、訪日客が多い東南アジア諸国はこの10年間で2倍程度は賃金が上昇しており、中国(上海)となると1991年の約23倍、10年前と比較しても2倍以上となっており、いかに日本がこの30年間、停滞しているかがわかる。

世界の中で賃金が上昇せず、いつのまにか「格安天国」になってしまった日本。日本は先進国でも後進国でもなく「後退国」という表現、言い得て妙である。先日もスペインから一時帰国した学生時代の友人が日本の外食の安さは異常と語っていた。30年前は日本の3分の一程度であった外食費が今や日本の倍程度に上昇(地域にもよるが)。それに対して我が国は失われた30年近くの間、外食代もそのままでワンコインランチなるものも登場した。

外食の安さは全国チェーン店の拡大が大きく関係していると管理人はみている。大量仕入れと安いバイト賃金で徹底的にコストカットし、古くからある個人店を凌駕、結果、地域の経済力を弱体化させている。海外の最低賃金を見ると高い国ほど外食費も高いというデータがあり、ドイツやフランスでは1500円以上が当たり前になっている。生鮮食料品などは日本と変わらないので外食の安さは際立っており、それが当たり前と感じるようになってしまったことに恐ろしさも感じる。

観光産業でも急上昇したホテル代に目が行きがちだが、それは大都市部などごく一部の地域に過ぎず、インバウンドの恩恵が少ない地方のホテルではシングル5千円程度、温泉旅館でも2食が付いて8千円程度がごくふつうにあり、30年前の料金で止まっているのだ。これでは外国人から見れば「格安天国」であろう。恩恵が少ないエリアでは簡単に値上げもできず、こういったところにも二極化が進んでいる。

外食産業とホテル業界、どちらも料金相場のイニシアティブを握っているのは大手チェーンであり、個店はそれに追従するのみである。ここがまかり通っている限り、日本経済はロスト30年間から脱却できないであろう。管理人はチェーン店が消えてもそれほど不自由と思わないが、今の若者にとってはきびしいかもしれない。

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