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北海道ローカル路線バスと秘境旅 函館-木古内-小谷石(函館バス)前編

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道南・渡島半島は険しい山が多く、海岸近くまで迫り来るような場所が多い。そんな険しい所にも古くから集落があり、行き止まりのような所に生活を営んでいる人々がいる。特に函館周辺には、海岸線をぬうように、小さな漁師町まで路線バスが足を伸ばしており、「秘境バス」の題材には打ってつけだ。
今回訪問をする知内町・小谷石は標高7、800メートル級の険しい知内山地がそのまま海に落ちるような急斜面下にある小漁村だ。平成20年度の総人口 199人 世帯数 84世帯の集落へ函館から路線バスが一日3往復通じている。函館市民に小谷石の名前尋ねても、殆ど知るものはなく、地名からして、秘境感が漂ってくる。
これまで、「ローカル路線バスで秘境旅」では、過去にバスで訪ねた場所を再訪することを原則にしていたが、今回は初訪問のバス旅である。
実は小谷石の存在を知ったのは、土曜日の夜にやっているテレビ東京系(TVH)の旅番組で取上げられたのがきっかけだ。奇岩怪岩が連なる壮観な海岸線にイルカの群れ、そこを民宿の漁船が案内してくれる。そして、驚くほどの獲れたての海の幸のご馳走、画面だけを見れば知床と区別が付かず、道南にこのような隠れたスポットがあるとは知らなかった。
早速、地図で調べると、福島町から知内町にかけての海岸線は、道路が通じておらず、国道228号線通称・松前街道も迂回するように内陸側を走っている。福島町側からは道道532号線岩部福島線、知内町側からは531号線小谷石知内線がそれぞれ岩部と小谷石で行き止まりとなっており、その間、十数キロキロが手付かずの状態で残っているのだ。
道南では珍しいネーチャー・スポットのようである。勿論、ガイドブックにも殆ど載っておらず、知られざる北海道の「秘境」かもしれない。松前・矢越道立自然公園にも指定されているが、「矢越」という地名自体、初耳である。
何と言っても、”自称・北海道通”としては、テレビで自分が知らない場所を紹介されたのは初めてのことであり、意地でも行かなければと、行動に出た。
早速、テレビ番組で紹介された漁師民宿に電話を入れてみた。ところが札幌に用事があるので、その日は閉めたいと言われ断られてしまった。何回か経験しているケースである。
それからだいぶ経った2010年5月、函館へ行く用事があり、思い立って現地へ行ってみることにした。
2008年発行の時刻表を見ると、小谷石へ直通する路線バスは一日3本あり、さらに木古内始発のバスも3本ある。また、JR江差線が国道に沿うように通じており、JRからバスに乗り換えてもよい。
小谷石行き函館バスが発車する函館駅前ターミナル6番乗り場は、同じ道を走る快速松前行きや恵山、鹿部行きなど比較的距離の長い路線バスが出るようだ。
函館バスのホームページを見ると、小谷石行きの時刻は載っていない。以前は「道内時刻表」(交通新聞社発行)に掲載されていたが、最近は観光路線以外は削除されてしまいダイヤがわからない(小谷石行きは観光路線ではなく生活路線ということであろう)。仕方なくバス案内所でペラ紙の時刻表を貰った。これで見ると木古内発の3本のバスは消えており、すべて函館発。便数は半分までに削られてしまった。最近のローカルバスの削減は急ピッチで、この先が思いやられる。
しかし、直前まで時刻がわからないのもバス旅の醍醐味である。
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函館駅を出発した路線バスは函館湾に沿うように国道228号線を進んでいく。暫く走ると反対側に函館の町並みと函館山が見えてくる。ほぼ江差線に沿って走っているので鉄道車窓からの眺めにも近いが、上磯(現・北斗市)にある太平洋セメント上磯工場の海上桟橋が面白い。国道の上から海上(函館湾)に向かって全長6.2kmの長距離ベルトコンベアが敷かれている。その突端から大型船で石灰石が運ばれていく施設だが、コンクリートの橋脚が延々と続く、なかなか壮観な眺めだ。列車からもよく見れるが、バスだとさらに近く、ゆっくり走るので観察することができる。
海岸線を淡々と走り、函館駅から1時間ほど行くと当別駅前というバス停がある。江差線の渡島当別駅がある場所だが、バス停を降り、踏切を渡ると男爵資料館が見えてくる。木製のサイロや牛舎などが連なり、100年前のアメリカの農場に来たような景色が現れる。
ここは男爵イモの生みの親である川田龍吉を記念して作られた資料館だが、農業以外にも氏のコレクション、特に川田氏が愛用した日本最古の車「ロコモビル蒸気自動車」や20世紀初頭の米製トラクターなど珍しい博物館となっている。
この川田氏、生い立ちや生き様はニッカウヰスキー創業者・竹鶴氏とどこか通じるものがある。余市のニッカ工場ほど大きくないが、洋行した明治男の気骨のようなものを両者にはかんじる。
この資料館から20分ほど歩くと、小高い丘の上にトラピスト男子修道院が見えてくる。函館で修道院と云えば、湯の川温泉や空港に近いトラピスチヌ女子修道院が有名だが、当別の男子修道院の方が観光化されておらず、ロケーションも素晴らしい。
当別駅から坂を登りきると、真正面の丘の上に教会が見えてくる。牧草地のど真ん中に、高い樹木で囲まれた一本道があり、修道院へ向かって延びている。まるでヨーロッパのカトリック教会に来たような錯覚にさせてくれるほどの本格的な景観である。
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トラピストへはこれまで何度か訪れているが、ここへ来ると厳粛且つおごそかな気分となる。曽洞宗の大本山・永平寺ともどこか共通したようなものを感じるが、永平寺はどちらかと云うと女子修道院に近い観光地だ。カトリック教会(修道院)と禅宗の古刹には独特のピリピリ感があり、宗教が違っても、私語を交わしてはいけない戒律(無言)や祈り、開墾作業など共通点も多い。
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北海道土産の定番であったトラピストクッキーやバター飴はここで作られている。ここのクッキーは、さっぱりした飽きのこない味である。人さまへのお土産ではなく、いつも自分用にここのクッキーを購入するが食べだすと止まらなくなる。ここでしか買えないクッキーや飴もあるので、トラピスト=昔ながらのものと決め付けない方がよいと思う。バカにしてはならない美味しさで、粗末にしては罰があたる。
また、トラピストを訪れると石膏づくりのマリア像や十字架をこれまで何度か購入している。我が家には数体のマリア像があり、訪ねてきた友人から「マリアフェチ」と云われてしまったことがあるが、ここへ来ると贖罪の意識が芽生えるのであろうか。
当別を出発すると釜谷駅前-泉沢駅前 -札苅と江差線の駅に沿うようにバスは走る。途中、 木古内町・亀川のサラキ岬には咸臨丸終焉の地(勝海舟・坂本龍馬ゆかりの西洋式蒸気船)があり、ちょっとした公園になっている。
経由地・木古内へは函館から1時間半程度で到着する(JR利用だと普通列車で約1時間)。木古内は交通の要所であり、青函トンネルを通る津軽海峡線は、ここで江差線と合流し、江差方面と函館方面に分かれる。木古内から先はどちらも江差線だが、函館へ向かう下りが電化された幹線なのに対し、江差へ向かう上りは電化もされていない忘れ去られたような「閑線」だ。
実は、今回の小谷石行き、木古内までは江差線を利用させてもらった。これまで函館-木古内間は松前行きのバスで乗車しており、レンタカーや国道に沿うように走るJR利用など数え切れないほどこのルートは利用している。なのでアクセントを付ける意味でも鉄道&路線バスにしてみた(トラピスト修道院の記述は過去に訪問した時のものである)。
函館を10時12分発の江差行き列車に乗車し、11時15分に木古内へ到着。一両が切り離され、江差へ向かう。木古内からは12時32分発の小谷石行きへ乗り換えるが、このバスは函館駅を10時58分に発車したものだ。
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木古内の駅へ降りたのは初めてだ。北海道のローカル駅の玄関はどこも似ている。客待ちする数台のタクシー、辛うじて営業している僅かな食堂や喫茶店、朽ちかけた古い駅前旅館があり、駅前広場のような場所から真っ直ぐ道が伸び、国道やその旧道にぶつかる。そちらがメインストリートになっており、駅前通りのような場所は忘れられたような存在になっている。木古内も典型的なローカル駅の風情で、どこかの駅に似ているが類似だらけで思い出せない。
昼食は小谷石でと考えたが、食べられる保証はないので、木古内で取ることにした。目に飛び込んできたのは「駅前飯店急行」である。
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