観光を通じて日本が見えてくる 「日本の観光黎明期」展

観光を通じて日本が見えてくる 「日本の観光黎明期」展

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東京・汐留にある旧新橋停車場「鉄道歴史展示室」で開催されている「日本の観光黎明期展」へ行ってきた。小さなギャラリーだが、鉄道をテーマにした好企画が多く、前回は管理人が写真集も持っている石川光陽写真展「警視庁カメラマンが撮った昭和モダンの情景」が開催されている。

日本の観光黎明期とは興味をそそられるテーマだが、この展示ではお伊勢参りや日光詣といった江戸時代の話ではなく、鉄道をテーマにした近代のものだ。明治期から昭和初期までの取り組みに目が向けられているが、特に大正末期から昭和初期には、屋外レクリエーションや観光旅行が大衆化しており、今回のサブテーマ「海へ!山へ!鉄道で」がまさに合致する。

日本で鉄道を利用した観光旅行が活発になったのは大正中期からだという。ちょうどその頃に本州の隅から隅まで鉄路が延び、団体周遊旅行が人気となり、旅行ブームになったようである。2週間以上をかけて観光名所を周遊、本州だけではなく、既に連絡船網が出来上がった北海道や四国、九州まで足を伸ばした。当時、北海道まで行く人は少なかったであろうが、九州の別府などはいっきに人気が出た。それまで温泉といえば、近場の湯治が一般的であり、温泉旅行や慰安旅行という概念が出来上がったのもこの頃であろう。

震災を挟んで日本はいっきに近代化・都市化が進む。大正末期からはハイキングやスキーなど現在の野外レジャーの原型とも云えるスタイルが出来上がった。その頃には日本交通公社(日本旅行協会)から時刻表や旅行雑誌の「旅」が刊行されてレジャーブームは全国的なものとなる。

管理人は「旅」をはじめとした当時の旅行雑誌や案内書、パンフレット、絵葉書などをコレクションをしているが、大正末から昭和10年頃までがもっとも中味が充実しており、束の間の余暇を楽しめる時代であったのかもしれない。特にスキーは相当人気があったようで、各地にゲレンデがオープンしている。今では考えられないが、埼玉の奥武蔵や神奈川の丹沢、山梨の山中湖に笹子峠などにもスキー場があったらしい。

もし、戦争がなければと思ってしまうが、空白の20年間をいっきに挽回するように、高度成長期には第二次レジャーブームが押し寄せた。第二次ブームでも牽引役は団体旅行と温泉、登山やスキーであったが、そのモデルはバブルの崩壊と共に終わってしまった。

この「日本の観光黎明期展」は11月20日まで開催されている。入館は無料である。

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