観光庁は、若者の旅行振興につながる取り組みを表彰する制度を創設する。これに関連して、22日からこの表彰制度の名称(キャッチフレーズ)募集を開始した。同日記者会見した井手憲文長官は、「若者が旅行に出かけたくなるような名称を募集する。(創設を通じて)若者の旅行離れに歯止めをかけたい」と意欲を示した。(6/30付 観光経済新聞)
これまでも何度か拙サイトでは若者の旅行離れについて述べてきた。旅行離れの原因は複合的であるが、海外旅行は20年前よりも若干だが増えているというデータもある。一方、国内旅行に関しては間違いなく減っており、旅行離れが進んでいると云えよう。
これは管理人の推測だが、就活や買物、コンサートなど若者の長距離移動の機会は以前よりかなり増えていると思う。この20年で新幹線は延伸し、高速道路は全国を網羅、高速バス網が隅々まで張り巡らされている。また、航空機も運賃が大衆化し、LCCの登場もあり本数も増えている。公共交通の利便性が高まり、長距離移動の機会が増えた代わりに、これまでの旅行という形態が崩れてきた気がする。
長距離移動はこれまで非日常的なものであったが、移動の容易化により日常的なものに変わった。これは地方発だけではなく、都会発でも同様な傾向がありそうだ。移動馴れしたことにより、旅が特別なものではなくなった。旅に出かけるにしても短期間、恋人や友人グループ、温泉旅行など現実的な選択をする。旅の目的が日常の延長線上に変わり、未知の世界へ飛び込まなくなった。当然、ひとり旅は減ってくる。
旅とは直接関係ないが、若者の旅離れと関係ありそうな光景に出くわした。管理人がよく行く日帰り温泉施設でのことだが、先日中学生男子4人組が入浴をしており、てっきり保護者同伴かと思ったが、休憩室の大広間でその中学生たちが黙々と食事をしながら携帯ゲームに講じていた。1時間近く何も喋らない光景は異様であったが、休日に中学生グループでスパに来るというのも時代を表しているかもしれない。
また、平日の昼間には制服を着た高校生カップルが大広間で囲いを作り、いちゃついていたこともある。入浴だけなら600円ぐらいなので日帰り温泉をデートコースに使っているようである。それをどうこう言うつもりはないが、中学生4人組や高校生カップルを見ていると若者を旅へ連れ出すのは大変なことだとその時思ったりした。
旅をしない原因のひとつに、自分の領域から出ようとせず、冒険を好まない体質があるのではないか。自分の城から出ないので、旅に出ても泊まる場所は漫画喫茶か安いビジネスホテルなど最低限のプライバシーを確保できる場所を選択する。他人と交流する機会が多いユースホステルやゲストハウス、民宿などは敬遠されてしまう。
若者はふたたび旅行へ興味を持つようになるのか。
旅には習慣性があるので、きっかけづくりにかかっていると思う。しかし、今の若者の置かれている状況なども合わせて考えると、一筋縄ではいきそうもない。経済状況が好転すれば、お手軽旅行の機会は増えるかもしれないが、質的な向上を求めるのは難しいような気がする。
旅を習慣化させるには、家庭や地域、学校などが積極的に子供へのレジャー機会をつくり、その魅力を小さい時から覚えさせることが重要ではないか。家族旅行の機会が多かった家庭の子供はその後、旅好きになる傾向があるという。
昨今、家族旅行の機会が大幅に減っているが、これには経済状況以外にも原因がありそうである。「かわいい子には旅をさせよ」というが、外へ出るきっかけを大人たちも作ってあげる義務があると考える。
【参考】観光庁資料「若者旅行を応援する表彰制度について」
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