クラブツーリズムの温泉滞在商品の一例
この時期になると道外からの北海道ツアーがいっきに安くなる。2泊4食付で2万円台前半はザラであり、中には3泊6食付でバスツアーが付いているものもある。以前は行きのエアは朝が早く、帰りは深夜にずれこんでしまうなど制約が多かったが、今では昼間の便や添乗員が付かない個人旅行型のツアーであれば希望便を選択できるようになっており、自由度は増している。
最近、旅行会社の新聞広告でよく見かけるのは連泊型のツアーである。各旅行会社のメディア事業部が主催しているものが多いが、たとえばクラブツーリズムの「秘湯の天人峡温泉!北海道でのんびり♪5日間」コースでは、羽田-旭川の往復のエアとホテル天人閣での4泊8食が付いて3万円である。出発日は関係なく、さらにひとり参加でも金額が変わらないというのがウリである。メディア事業部のツアーは格安だが、これまでひとり参加を受け付けなかったり、参加できてもかなりの割増料金を取られていたので、ひとり温泉でゆっくり過ごしたい人にはいいかもしれない。
こういった温泉滞在型のツアーはオフ期を中心に2,3年前から増えてきているが、宿泊客ががくんと落ちる冬期対策として、宿側も利益が殆どでなくても、滞在により館内で少しでもお金を落ちればということに期待をしているのであろう。
しかし、泊まる側からしてみると難点もある。天人峡コースの場合だと大雪山の山中にあり、外出することもままならない所に4連泊をする。滞在中に1回のみ旭川までの無料送迎バスを利用できるとあるが、マチまではかなり距離があり、外は恐ろしく寒い。レンタカーがあれば別だが、このコースでは旭山動物園や富良野、美瑛に行くのも難しい。
クラブツーリズムでは、そのあたりのことも考えてか、天人峡と白金温泉に2泊ずつするコースも設けている。この他、十勝川温泉と幕別温泉に2泊ずつするコースも同じく3万円だが、近距離の違った温泉へ移動するというのがポイントである。また、受け入れる温泉宿に連泊客をもてなすノウハウがあるかという問題もあり、場所と宿選びは慎重になる必要があるであろう(上記、天人峡は湯治場であり、かつて旅芝居などもやっていたが)。
これら温泉滞在商品は、中高年が多いクラブツーリズムの利用者層に合った商品設定であるが、同様なものは阪急交通社トラピックスでも設けている。同社では北海道の長期滞在商品に力を入れており、一昨年からは釧路市の「ちょっと暮らし」にツアーを送り込んで、実績をあげている。たとえば、「釧路プリンスホテルに4連泊・知床ウトロ温泉に2連泊 長期滞在7日間」といったコースも設けている。内容はコース名の通りであるが、釧路で「ちょっと暮らし」を楽しんだ後、ウトロ温泉に連泊をするもので、旅にアクセントを付けている。
また、よく最近見かけるツアー商品として、同一の温泉宿に3泊以上(2泊の場合もある)すれば4泊しても5泊でも料金が変わらないというものがある。また、札幌のシティホテルと定山渓の温泉ホテルをセットし、それぞれお好みをチョイスし、どちらかを連泊にするといった個人旅行型のツアーも登場している。おもに廉価なツアーで使う温泉宿が多いが、今後、増えてゆきそうである。
こういった温泉滞在型や都市部宿泊と温泉を組み込んだ自由型旅行は、おもに新聞広告や会員向け冊子などで集客するメディア事業部の商品である。シニア層を意識したものであるが、オフ期対策として、宿側と旅行会社側の思惑が一致した商品であろう。
登場する温泉宿は団体ツアー中心の大箱が多く、三ツ星クラス(最高五つ星)の中堅どころが目立つ。数でさばく閑散期対策であり、北海道観光の質向上につながっていないように見えるが、格安バスツアーで道内を周遊するよりは、同じ場所で滞在するだけでも進歩かもしれない。あとはそれが定着するか否かである。そのためには連泊客を受け入れる宿側の意識改革も求められる。食事内容もそうだが、宿スタッフが滞在客に対しどう接することができるか、このあたりがためされるところだ。
阪急交通社トラピックスのの温泉滞在商品の一例
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