写真左 ・北海道中央バス3か国語対応二階建定観バス(この車両は先日引退) 右・ 江ノ電バス定観「よりとも」号
道は本年度、人手不足が課題となっている道内観光バスの運転手ら乗務員確保に向けた支援事業を初めて実施する。道内では外国人客を中心に観光需要が伸びる半面、運転手やガイドは減少傾向にある。この問題に対処するためバス会社と連携し、若者を期間雇用して技能を習得させるなど、業界に若手が定着するよう後押しする。 (11/1付道新)*道新リンクは一か月程度で切れます
バス運転手が不足しているのは最近よく聞くニュースである。貸切バスに限らず、高速バスや乗合路線バスなどすべてのジャンルで不足しており、すでに長時間労働の問題や運転手不足による減便ダイヤ改正などが行われている。こうなった背景には、規制緩和による参入の自由化や補助金カット、それに伴う既存バス事業者の大幅人件費削減、さらに最近は増え続ける外国人観光客に対するバス供給が追い付かないなどの複合的な理由が存在する。
運転手不足はクローズアップされているが、意外と取り上げられていないのがバスガイドの問題である。実は2002年の規制緩和前後からガイドを取り巻く環境が大きく変わってきている。それまでは貸切事業者や定期観光バスを運行する乗合事業者が新卒女子(おもに高卒)を中心に採用していたが、新規参入事業者を中心にガイドを雇わない会社が増えるようになってきた。新参者は車両が数台程度の零細が多く、ガイドを乗せないバス輸送のみを引き受けるようなところが多かった。その分、料金も安く、旅行会社もそういった事業者に発注し、ガイドが必要な場合は添乗員やバスガイド派遣会社からのスタッフ(おもに結婚退職をしたバスガイドOG)を活用するなど自前の純粋なガイドさんの居場所が少なくなってくるようになった。もともとバスガイドを採用できる会社は一定規模以上であるが、規制緩和によって既存の事業者も経営状態が厳しくなり、定期採用を手控えるようになった。
管理人が気になっていることのひとつに、採用が途絶えることによって技術の伝承がなされず、質低下を招くのではないかということがある。それでなくてもバスガイドには国家試験のような公的なライセンスがない。実際は厳しい社内研修があり、相当な量の暗記をさせられ、先輩ガイドからみっちりしごかれるが、会社によって教える内容はマチマチである。たとえば、北海道だけでも、すべてを覚えるのは大変なことである。行ったことがない場所もあるであろうし、カバーできる範囲は限界があるであろう。特に最近は外国人観光客が増えており、求められるものも変わってきている。外国人の場合は専用のツアーガイドが随行する場合が多いが、その土地ならではのガイドさんも必要である。
観光バスガイドは昔ながらの自社のガイドが行うか、派遣会社を利用するか、添乗員か語学にも長けた専用のツアーガイドが行うかなど旅行形態によっても異なるであろうが、どの立場で行うにしても何らかの資格認定や検定試験があってもいいかと思う。併せて、技術の伝承という意味も含めて、自社採用のガイドさんの定期的な採用を行ってもらいたい。
今回、道は札幌観光バス、ドリーム観光バス、千歳相互観光バスの3社でつくる共同体に、事業委託経費として3500万円を支出して、運転手とガイドを育成するというが、本来であれば、国ベースで行うプロジェクトである。観光立国を本気で目指すのであれば、何らかのガイドラインは絶対に必要である。ガイドさんのアウトソーシングが氾濫すれば統一が取れなくなり、質は必ず落ちる。これは高速ツアーバスの問題にも共通するはずである。
管理人は90年近く続く日本流の観光バスガイドは、外国にないスタイルであり、外国人にもウケると確信している。今でもガイドさんは乗客からお礼の手紙やプレゼントなど多数貰うというが、これは日本ならではであろう。「おもてなし」という言葉は使いたくないが、ガイドさんにはピッタリな言葉である。
参考:昭和自動車(佐賀県唐津市) 新人バス研修紹介HP
「奈良交通の人気バスガイド本出版、もっと注目されていいガイドさん」→拙サイト
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