「私をスキーに連れてって」をもう一度JR SKIキャンペーン

「私をスキーに連れてって」をもう一度JR SKIキャンペーン

 

今年は雪が早く、前倒しでオープンしているゲレンデもかなりあるようで、いよいよスキーシーズンが始まったという感じである

20数年前の今頃であればスキー用品やスキーツアーのCMが流れはじめ、駅はスキー場のポスターでいっぱいになっていた。JR各社もシュプール号をはじめとしたスキー列車やスキー旅行商品の宣伝に力を入れていたが、今ではめっきり数が減ってしまった。その中で唯一といっていいほどスキー商品に力を入れているのがJR東日本である。系列のガーラ湯沢スキー場や冬期は利用者が減る新幹線沿線にゲレンデが多いということもあってか今でも毎年冬になるとテレビCMを流し、キャッチコピーをつくってプロモーションを続けているあたりはエライなと感心していた。

このスキーキャンペーンはガーラ湯沢が開業した1990年から「JR ski ski」として行われており、当初の数年はCMで毎年、ダンスボーカルユニットのZOOの曲が採用され、「choo choo TRAIN」などご記憶にある方も多いであろう。JRではないが、スポーツ用品のアルペンCMで流れた広瀬香美の「ロマンスの神様」が流行ったのもこの時期であり、この1990年代前半がピークであった。

これまでは若者層ターゲットのCM内容であったが、2017-2018シーズンのキャッチコピーとポスターを見て驚いた。何と「私をスキーに連れてって」を強烈に意識した『私を新幹線でスキーに連れてって』であり、ポスターの図柄も完全なコピー、音楽もユーミンの「BLIZZRD」と時代がちょうど30年逆行してしまった。

このコピーを聞いて、40代後半以上の世代であれば、懐かしいであろうが、当然ながら1987年に上映された東宝映画「私をスキーに連れてって」をモチーフにしている。ポスター含め、パロティ的な要素も強い。これを見て、複雑な思いをしている方も多いかもしれあい。

本題とは外れるが、この映画には思い出があるので少し触れさせていただく。正月映画がかかる前のちょうど興業の端境期といえる11月末からの2週間予定で上映されたかと思うが、これが予想外の大ヒットとなった。当時、私は20代半ばであったが、営業の仕事で東宝本社によく行っていた。私は日本映画が好きで、学生の頃は年間100本近く観ていたが、担当者が撮影所出身であった。仕事の話は殆どなく、映画談議をしていたが、なかなか情報システムを導入してくれず、”見込み客”が長く続いていた。

先方はいつも来てくれて申し訳ないと思うのか、必ず映画や芝居のタダ券をくれたので、日比谷の本社を出た後はよく映画を観ていた。この「私をスキーに連れてって」、何も期待をしないで観たのだが、生活感がなく、難しいメッセージ性のものもないお気楽な、今までにない日本映画で、これが非常に楽しめた。

制作をしたのは映画人ではなく、クリエーター集団のホイチョイ・プロダクション。『極楽スキー』というスキー場のミシュラン版のような書籍も同時に発行していたが、バブル世代の先導役という感じであった。
仕事で東宝本社に行くと、その担当者に観てきた作品の印象を訊かれるのだが、私をスキーに関しては「これまでの日本映画の常識を打ち破るもので、ある種、革命的。。。」といった内容のことを話したが、団塊世代の先方は「俺には理解できない」とひとこと言われた。やはり団塊世代で、映画好きが集まるカフェの店主にも、同様な内容で感想を述べたが、「映画好きのOさんからそんな言葉が出てくるなんて。。。」といった始末で、年齢が上の映画好きからみると邪道のように映ったようである。余談だが東宝映画には、その数か月後、システムを購入していただいたが、映画議談が多少は功が奏したのかもしれない。

話が逸れたが、今回のJR東日本のスキーキャンペーン。ちょうど上映から30年が経過し、50歳前後になった「私をスキー世代」(バブル世代)の家族連れを狙ったものであろう。映画の主演を務めた原田知世も11月28日で50才になったが、もうそういう時代なのである。この映画、知らない若者に話すと不思議な顔をされたり、観たという40代以下に感想を訊いても、「そういう時代だったんですね」という感じで、あまり反応がない。
団塊世代と変わらないような気もするが、特定の世代に与えたインパクトは半端なものではなかったはずである。

今回の「JR ski ski」プロモーション、ヤケクソなのかマーケティングに基づいたものなのかは不明だが、プレゼンした代理店の部長や担当のJRの管理職がこの世代で、ちょうどJR誕生30年と重なるので、夢をもう一度ということでやったということも想像できる。
最近のスキー場プロモーションをみているとインバウンドか家族連れ狙いのどちらが大半。いちばん多くのスキー場を持っている西武も家族連れとインバウンドの二本立てであるが、若者がゲレンデに来てくれず、お金も使ってくれないので、ここへ行くしかないのであろう。

既にバブル時代がパロディになってしまい、バブル世代のリストラも始まっている。新人類世代の私は窓際世代になってしまったが、スキービジネスは「失われた20年」ではきかず、ジリ貧から脱出できていない。
人口減少も相まって、根本的な解決策がないのが現状だが、まずは体験、経験してもらうしか方法はない。若者の旅人口の減少にも共通する問題だが、あらためて「検索よりも実体験」してもらいたいな、と思ったりする。

 

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