今年の夏は県内の海水浴場の大半がオープンできないことになってしまいそうだ。神奈川県から開設にあたっては自治体や海水浴場組合向けに感染防止対策ガイドラインが出されたが、「海の家は完全予約制」「砂浜に一定間隔の目印設置」などといった厳しい内容であった。
最近では海の家もカフェや夜のバーなど飲食のみの利用が多い
県の指針案を読む限り「やめろよ」と言っているのに近いものがあった。海の家は1-2か月で1年間の稼ぎを 出さなければならない短期決戦ビジネス。以前は利用料を払い着替えや休憩、シャワーなどに使ったものであったが、最近ではカフェや夜のバーなど飲食のみの利用が多く、 場所によっても違いはあるが、以前とは使い方も変わってきている。完全予約制とあるが、海の家ではホームページを持っていないところも多く、現実的に無理な話。砂浜での一定間隔の目印設置を含め、あまりに現場を知らない無理な要求である。
ライフセーバーなどの監視員や救援所がなければ水難事故の危険性も高まる可能性
実は6月1日にこの情報が発表される二日前、材木座海岸で海の家を経営している方から鎌倉も断念することを知らされた。海の家関係者は最後まで開設できるように動いていたが、江の島や三浦など周辺の海水浴場の開設中止が決まり、このまま仮にやっても大量の客が訪れて収拾が付かなくなる恐れもあり、断念したという。関係者は憤懣やるかたないといったところだが、海水浴場が開かれないことでかえって無秩序に人が訪れ、騒音や禁止されているアルコールやバーベキューなどで無法地帯になる恐れがある。これまで住民とのトラブルを避ける意味もあり、夜間の音楽禁止やアルコール提供の終日禁止など各海水浴場は努力をしてきたが、それらがパーになってしまうかもしれない。また、ライフセーバーなどの監視員や救援所がなければ水難事故の危険性も高まる。砂浜、海の中と訪れる客をどうやって管理するのであろうか。
鎌倉市の松尾市長は「県のガイドラインに基づいて開設することは非常に難しいと判断した」と述べているが、県の指針に対し、市などの自治体側も責任を被りたくないので「やめる」ということであろう。黒岩知事は「開けないと思ってしまうなら、やむを得ない」とコメントしているが、補償もせずに何ともである。3.11の後、各地で津波のリスクを考えて花火大会が中止になった時と似ていが、今回は遥かに深刻である。
この問題、まだまだひと波乱、ふた波乱ありそうであるが、今のままではトラブルだらけになるであろう。