このブログでは旧品川のホテルパシフィック現在の「シナガワグーズ」に関する記事を何度か書いた。ちょうどパシフィックからグーズに変わる2009-2010年頃にかけての話題が殆どだが、そのグーズも2021年3月末をもって閉鎖され建物も解体されることになった。
現在の「シナガワグース」の前身は京急系のシティホテル「ホテルメリディアン・パシフィック東京」であった。
1971年創業、京急のお膝元である品川駅前に立地し、フランス系のメリディアンと提携していた為、欧州系の客が多く、エールフランスなど欧州系航空会社のクルーも目立ち、小洒落て洗練されたイメージのホテルであった。インバウンドブームが起こる僅か10年ちょっと前の話であるが今はこのようなホテルはないであろう。2011年にはホテル時代の建物をそのまま引き継ぐかたちで、「シナガワグース」というテナントビルに変わった。ホテルの方はパシフィック時代の客室をそのまま活用し、同じ京急系のホテルチェーン「京急EXイン品川」が入居した。EXインはビジネスホテルだが、日本ホテル協会にあらためて加盟するなどワングレード上の位置付けだったようだ。レストランやバー、宴会場などは新たに入居したブライダル会社が運営するものとパシフィック時代から残ったテナントなど様々であった。
私ごとだがこのホテルと縁があったので少し思い出を語らせていただく。まず通っていた中学高校がこのホテルの前の坂(柘榴坂)を登ったところにあって卒業謝恩会もこのホテルであった。社会人になってからも会社が品川駅近くの時代が続き、便利なのでホテルメンバーにさせていただいた。料金も手頃であり、仕事が遅くなった時にはよく利用をした。室料が半額になったがそれでも1990年代でシングル14000円ぐらいであったか。ホテルのアーケード内にアートショップがあり、当時写真に凝っていたのでこの店で写真用のフレームを作ったりした。ここのアーケードはこじんまりしていたが、お店同志の仲がよくて飲み会に参加させてもらったこともある。アーケードには高倉健さん御用達の理容室があった。こちらもたまにカットで行っていたが一度も健さんに会ったことはなかった。午前10時ぐらいに来ると聞いたが専用室があったようである。その理容店もグーズになってから暫くして閉店をした。理髪店だけではなく、宝石店やブティックなどパシフィック時代の顧客が少しずつ離れて行くと閉まって行った。特にプールが釣堀になった時はセレブな水着美女で賑わっていた時代を知っていたので悲しい思いをしたものである。
いちばんのお気に入りは芸能人のショーが楽しめるカクテルラウンジ「ブルーパシフィック」であった。連日、かなりメジャーなミュージシャンが出演しており、「別れても好きな人」のロス・インディオスは約30年に亘って週1ぐらいのレギュラーであった。他にも高木ブー、石川進、アイドルではあいざき信也や双子のリリーズなどいろいろなジャンルを観た。このホテルの会員になったのも実はラウンジのチャージが半額になったことが大きかったかもしれない。高校生の頃からムード歌謡好きという変わった少年であったが、大好きなロスインディオスを20代から生で観れた訳である。最近は好きが高じてそのロス・インディオスのライブを地元で開催したりしているので不思議な縁である。
少し話が逸れたが、パシフィックは当初、2007年頃にも解体し、新たな外資系ブランドホテルとして建て直す計画があったと聞いたことがある。しかしリーマンショックによって計画が破綻。結局、親会社の京急が直営であった泊・食・宴の施設をテナントビルの「グース」としてリニューアルし現在に至っている。
京急系のホテルはお台場にも「グランパシフィック」があったが、バブル崩壊で開業が2,3年遅れて開業、その後は日航ブランドの「グランドニッコー東京」へ。千葉にあったパシフィックも売却、現在京急系のシティホテルはなくなっているので残念である。メリディアンであったので仏蘭西料理が好評であったが、現在唯一、それが体験できるのは観音崎京急ホテルだけである。
再開発では複合ビルになるという。好立地、高輪と品川の両プリンスホテルに挟まれているが、もしホテルが入るとすれば最近よくあるビルの上階を利用したクロージングされた外資系ホテルになってしまうのであろうか。かつてのメリディアンのようなグランド型ホテルが出来てほしいところだが時代には合っていないか。ホテル業に対し、高い志を持っていた京急の良心にも期待したいところである。