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長距離フェリーに吹く風

北海道は本格的な観光シーズンへ突入しました。これから夏休みにむけて本州方面からマイカー持参で訪れる人も多いかと思います。
マイカー利用者やライダー(みつばち族)にとって”移動の足”となるカーフェリーですが、先日、本州と北海道を結ぶ新日本海フェリーの累計乗船客数が1千万人を突破しました。
新日本海フェリーは1970年8月の就航以来、当時としては画期的な1万トンを越えるユニークな外観の大型船の就航とハイスピードがウリで、「海の新幹線」と言われ、大型フェリーブームの先がけになった会社です。
就航当初は舞鶴・敦賀-小樽航路のみでしたが、次第に航路や寄港地を拡大し、現在は本州側が舞鶴・敦賀・新潟・秋田、北海道側が小樽苫小牧東をネットワークしている現代版の北前船です。
このフェリーの魅力は、太平洋側を航行するフェリーと比べ、運賃と車積載料が安く、その割りに客室や船内施設が充実していることです。たとえば新潟-小樽間を特等で利用すると1万6千円、2等では5,600円で車積載量は4m未満で16,100円です。(積載料にはひとり分の2等運賃込み)
参考までに太平洋ルートで距離が新日本Fと近い仙台-苫小牧を結ぶ太平洋フェリーで特等使用で17,300円、車積載料は23,000円なので太平洋周りが若干高めの設定になっています。(大洗から苫小牧へ行く便は距離からするともう少し高めの設定になっている)
船室は1等以上が施錠できる個室となり、和室か洋室が選べます。特等ならバス・トイレ、テレビなどが付きホテルの客室と殆ど変わらないつくりです。また、船によっては特等以上に専用デッキがあります。
また、特等利用者以上の専用レストランもありますが、最近は休業中のことが多いようです。寝台列車のカシオペアやトワイライトエクスプレスがいくら豪華であってもゆとりでは絶対にフェリーに敵わないでしょう。
ところで、フェリー業界は長い不況が続いています。バブル崩壊以降の積荷(トラック)の減少、航空運賃の大衆化やレンタカーの値下げによるマイカー利用の減少などで長距離フェリー会社は苦戦をしいられています。また、最近は原油価格の高騰により、大変厳しい状態が続いています。
新日本海Fでも以前に較べると船内サービスが省力化されており、キャビンスタッフも減っているようなのでコストダウンを計っていることが伺えます。
同じ日本海ルートを持つ東日本フェリーは、会社更生法申請中であり、航路の縮小などリストラ化をすすめながら、新経営陣による建て直しをはかっています。
本州と道内を結ぶ長距離フェリーは最盛期と較べるとルートや便数の減が目立っています。首都圏便では、東京港発着が東京湾をまわる時間ロスの関係ですべて大洗発着に変更となりました。
また、長距離フェリーが就航する以前から長い間、道東方面への足となっていた東京-釧路を結ぶ近海郵船のフェリーも航空機へ太刀打ちできず1999年から一般旅客の取扱いをやめています。
さらに北海道ルートではありませんが、新日本Fとともに長距離フェリーブームの先がけである首都圏と宮崎(川崎-高知-日向・川崎-那智勝浦-宮崎)を結ぶマリンエクスプレスが17日から休航になり、事実上の廃止になりそうです。
新日本海Fが物流中心の現代の北前船(海の新幹線といわれた)であったの対し、マリンエクスプレス(就航当時は日本カーフェリー)は物流と共に当時はまだ新婚旅行客も多かった南国・九州へ観光客を運ぶ役割も果たしていました。サンフラワーのCMを覚えている方も多いのではないでしょうか。
今回の休航とあわせ大手旅行代理店がメモリアルツアーを催行する新聞広告が出ていましたが、新婚旅行で行った人たちが懐かしんで参加したケースもあったかと思われます。
これで首都圏(京浜)発着のフェリー便は東京-徳島-新門司を結ぶオーシャン東九フェリーと久里浜-大分を結ぶシャトル・ハイウェイラインだけとなりました。
川崎を出向したラスト航海の模様はNHKニュースで報じられていました。フェリーがニュースになるのは珍しいですが、それだけ報道的価値がある知らせなのでしょう。今年の春、惜しくも引退したブルトレ「あさかぜ」、「さくら」のラストランと較べると余りにも淋しい光景でした。
長距離フェリーを取り巻く状況は厳しいものが続きますが、新日本海フェリーや太平洋フェリーなどは移動の手段だけとしてではなく、クルージングを満喫できる快適性を求めた新造船を定期的に送り出しています。
豪華な客室は勿論ですが、パブリックスペースを充実させ、ラウンジでのショーの開催や船長のトークショー(太平洋フェリーのみ)など一般乗船客(観光客)を飽きさせないサービスを提供しています。
特に太平洋フェリーのホスピタタリティは業界NO.1といわれています。
最近の長距離フェリーの傾向としては、物流を中心に考える効率性を追求した船か、逆にクルージング感覚を取り入れ、ノンビリ船旅を楽しむ観光志向を求めた船との二極化の傾向があります。
北海道航路は一部を除き乗船客志向が強く、観光客にとってはこれからも船旅を満喫できるサービスを提供しているといえるでしょう。
物流や経済構造の変化、原油高が続けば体力がなくなり、今後も航路の廃止が予想されます。
生き残る道としては寝台列車のカシオペアやトワイライトのような観光需要を目した豪華客船型フェリーへの特化などが考えられます。特に団塊層やこれまら旅行市場を活性させるシニア層の利用が見込まれるので乗船客と乗用車の積載は上向くのではないかと予想します。
しかし、全体的にみれば日本中をネットワークし、経済活動に貢献したこれまでの役目は終わったかもしれません。今年の夏はフェリーによる船旅はいかがですか。

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