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都はるみの「小樽運河」、気になる歌詞


先日、歌手の都はるみの最愛のパートナー中村一好さんが自ら命を絶たれた。プロデューサーとしては大変才能があった方のようで石川さゆりの「天城越え」、都はるみの「千年の古都」など演歌を超えた演歌を作っている。
担当作品の中に「小樽運河」がある。この作品は都はるみカムバック第一作のもので1990年にリリースされている。吉岡 治 作詞 弦 哲也 作曲
メロディはこちら
 
精進落としの 酒を飲み
別の生き方 あったねと
四十路なかばの 秋が行き
セピア色した 雨が降る
イェスタディを聴きながら
二人歩いた
あぁ 小樽運河
誰のせいでも ないけれど
これで終わるの 始まるの
あなたはほんとの 男なら
私一人に させないわ
イェスタディを抱きしめて
揺らぐガスライト
あぁ 小樽運河
上りのディーゼル 待ちながら
やっぱり明日も 漂って
傘をあなたに 貸したまま
セピア色した 雨が降る
イェスタディをもう一度
窓のむこうに
あぁ 小樽運河
イェスタディをもう一度
窓のむこうに
あぁ 小樽運河
これまでの演歌にない演歌、むしろ新ジャンルを創ろうとしている意気込みをかんじる曲、詩、アレンジである。メロディは「星の流れに」(菊池章子)、「東京ブルース」(西田佐知子)に似てないこともなく、アレンジは「センチメンタルジャーニー」(松本伊代ではない)を参考にしているが、けじめをつける旅、団塊世代と思しきヒロインに「イエスタディ」となかなか意欲的な詞である。
気になるのは3番目の歌詞、「♪上りのディーゼル 待ちながら」である。驚いたのは「ディーゼル」というフレーズ。小樽駅から上りといえば倶知安、長万部方面である。小樽から先は電化されたおらず、すべて気動車・ディーゼルカー。作詞の吉岡治氏はそこを忠実に再現しており、具体的で、職人技だ。
普通の演歌歌詞ならこの部分、「♪上りの列車を」、「♪上りの夜汽車を」あたりが来るであろうが、「ディーゼル」と使ったことでリアリズムが発生している。「♪上りの気動車」では田舎臭く、マニアになってしまう。いろいろな部分で新生・都はるみを送り出そうという意気込みがかんじられる曲である。
このヒロイン、上りのディーゼルに乗ってどこへ行ったのであろう?「小樽のひとよ」の時代なら函館まで客車に揺られ、青函連絡船乗船だが、時代は1990年。倶知安あたりでもう一度「上りのディーゼル」を待ったかもしれない。
それにしても小樽運河」の楽曲はいい感性。しかし、垢抜けすぎていて大ヒットには結びつかなかったのであろう。「千年の古都」もいいが、それまでの唸り節の都はるみとは違いすぎてファン層を捕らえられなかった。現実と理想の狭間で創作活動は難しい。

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