漢方薬製造・販売の最大手ツムラ(本社・東京)が、北海道での原料調達の拠点として夕張市に設立した「夕張ツムラ」の生薬加工場と保管倉庫が完成し、同市沼ノ沢の同社で1日、式典があった。 (11/2付 朝日新聞北海道版)
同社の芳井順一社長は工場完成を「生薬栽培を通じた地域貢献という夢の第一歩」とし、現在9人の夕張ツムラの従業員を将来は高齢者・障害者を含めた200人規模に拡大する方針を示した。地元は雇用面も含め、財政破綻(はたん)した同市の「再生の起爆剤」になると期待している。
財政再生団体・夕張の人口は10月末現在1万998人となった。これは市が炭都として最も栄えていた1960(昭和35)年の統計上の人口11万6908人と較べると10分の1の1万1千人台をついに割り、3月の財政再生計画策定の前提となった今年の推計人口1万1351人よりも、さらに353人下回っている。
炭鉱閉山後の同市の人口減少傾向は、2007年の財政再建団体入り以降、拍車がかかった。この3年で減少率は鈍化してきたものの、将来に不安を感じた勤労世代の流出は止まっていない。
そんな中、元メロン畑の敷地約3万平方メートルに完成したのは、2500キロの原料薬草を投入できる回転式ドラム乾燥機2基を備えた加工場と、適温で1千トンの生薬を保管できる倉庫。今後は道内で栽培した生薬すべてをここで1次処理して保管し、苫小牧港から茨城県内の最終工場に運ぶ。
保管能力1千トンは現在の同社の国内在庫量の12%にあたり、センキュウやシソなど道内の生薬栽培の比重は高まる一方。ツムラは今後、2015年度までに夕張に45億円を投資、10年後には自社農場も含めて最大200人を雇用するとしている。
実は漢方薬の原材料である生薬(薬草)はこれまで大半を中国で生産・管理していた。しかし、中国の経済成長で生薬の値段が急騰、また、薬草自体も採れなくなってきているらしい。漢方メーカーでは中国依存からのシフトを各社模索しているようだが、業界最大手のツムラが夕張に施設を設けることになった。
北海道は薬草農場(生産拠点)としての魅力があり、夕張にこういった施設を作るのは正しい戦略であると思う。雇用を削減した不安定な花畑牧場よりもツムラの方が夕張市も安心であろう。
折角、漢方メーカーが進出するのであれば、ヘルス・ツーリズムを打ち出すことができないであろうか。また、高齢者が多い夕張なので、市民向けに漢方を活用した健康対策が打てれば面白いと思うが。ツムラと地元ホテルがタイアップし、薬膳料理や体験メニューを企画するなど漢方を基盤とした複合的な観光開発にも期待したいところだ。
【参考】「夕張を漢方薬の拠点に 夕張ツムラの挑戦」(2009.09 道新特集記事より)
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