小樽観光協会が夜のHPを開設  観光の質向上と需要発掘に繋がる「ナイト・ツーリズム」

小樽観光協会が夜のHPを開設  観光の質向上と需要発掘に繋がる「ナイト・ツーリズム」

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夜の小樽観光を盛り上げようと、小樽観光協会は花園繁華街などの夜のスポットを紹介するホームページ(HP)「小樽HANAMACHI」を制作した。居酒屋やスナックなどの掲載店を募集中。インターネットを通して、後志管内最大のネオン街の魅力と奥深さを道内外に情報発信  する。 (11/16付 道新

このHP、「小樽HANAMACHI」はよく出来ている。サイト入口が「小樽市民」と「観光客」とに分かれているが、辿り着くところはどうも同じのようである。観光協会が作ったサイトとしては非常に踏み込んでおり、たとえばスナックの紹介では、店の女性従業員の顔写真や平均予算、「生ビール一杯無料」などの特典も紹介しており、ススキノのガイドブックのようである。こういった"ナイトガイド”は、ホテルなどに置かれているフリーペーパーを含め、大半が民間企業か、飲食店組合などが運営しており、公共性の強い観光協会がここまでやるのは異例である。

この背景には小樽観光の現実が見え隠れしている。小樽は典型的な日帰り・通過型の観光地で宿泊客が少ない。たとえば平成24年度は宿泊客数が61万2500人なのに対し、日帰り客数は598万6500人と全体の10%強しか宿泊をしていないことになる。これは道内主要観光地では異例であり、小樽市とよく比較される函館市では、宿泊客が平均65%に達しており、観光客数は多くても泊まってくれなければ実入りは少ないということだ。

小樽は札幌圏に位置し、アクセスのよい手軽な観光地だが、札幌からの日帰り客が圧倒的に多い。道外からのツアー客も道南と札幌圏を結ぶ通過地点にあるため、洞爺湖や登別などに宿泊客を奪われており、小樽は昼間だけの短時間滞在の観光地に甘んじていた。

また、宿泊客も運河周辺やすし屋通り、ホテル近辺で食事を済ますことが多く、観光客から見ると外れにある花園町へ足を踏み込入れるケースは少ないはずである。仮に訪ねても閑散とし、情報も少ないため実際に入店となると勇気がいる。運河周辺の飲食・みやげ物店は外部資本が多く、地元密着といいがたく、宿泊客でも素の小樽に触れることなく帰るケースが多いと思われる。

このあたり、管理人が住む鎌倉市と事情が酷使しているが、小樽の場合はそれなりに宿泊施設もあるので、宿泊客を地元の”ディープ・スポット”へ誘導できれば、小樽観光の質も変わってくるはずである。これまでの小樽は地元と観光客が乖離している印象であったが、少しでも花園へ足を運んでくれれば、高齢化が進み、中心街や飲み屋街の衰退が進む小樽に経済効果をもたらすであろう。

観光客にとって夜のすごし方は重要である。たとえばホテルに16時にチェックインをし、24時に寝るとすれば8時間ある。この8時間は日中の観光タイムよりも長いかもしれず、その使い方は非常に重要である。2食付の温泉宿であれば別だが、食事別のホテルに泊まれば、多くが外で食事を取るであろう。ところが夜間の情報というのは抜け落ちている。ガイドブックに紹介されている店の多くは観光客向けで地元客が来るような店は少ない。このギャップを埋める意味でも「小樽HANAMACHI」は価値がある。

たとえば、食事をしてから地元客しか来ないようなバーやスナックへ行ったり、隠れた夜景スポットを訪れたりする。夜はスケジュールが決まった昼間の観光と違い、ランダムに過ごすことができるので予定外の楽しみを作れるかもしれない。観光客が夜のマチへ出て少しでも賑わえば、地元客も戻ってくるかもしれず、相乗効果にも期待がかかる。

管理人は地方都市へ行くと、地元しか来ないような居酒屋を嗅覚で探して入るが、そこでの出会い、知り得た情報は貴重で、旅の印象を大きく変える。昼の観光より、夜の出会いの方が印象的ということもあるが、それだけ夜の過ごし方は重要である。強引にネーミングをすれば、「ナイト・ツーリズム」といってもよいかと思う。

これまでナイトガイドといえば、ホテルに置いてある飲み屋やスナックを案内したフリペの印象しかなかったが、今後は裾野を広げた広範囲な「ナイト・ツーリズム」の登場に期待をしたい。道内の支庁所在地クラスのマチであれば、そこそこのコンテンツは集められるはずだ。

昼間の観光情報は豊富にあるが、一歩踏み込んだ地元民ご用達のナマの情報は入手しずらい。HANAZONOのような地元情報サイトを通して、そのマチのファンが増え、観光そのものの質が向上してくれることを願いたい。

*参考ブログ 「人口減少が続く小樽 魅力あるマチなのにどうしてか」(2012.6.12)

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