JR釧網線などの利用を促進し、存続につなげるため、釧路の観光協会などの間で観光列車を製造、運行する構想が浮上している。外国人観光客を取り込むとともに、地元住民にJRを再認識してもらい乗車を促す。自治体とJR北海道の路線協議をにらみながらJRに提案する見通しだ。(4/19付 日経新聞北海道)
今のJR北海道には新しい観光列車を走らせる余裕はないであろうが、「湿原ノロッコ号」や冬のSLで外国人にも人気が高い釧網線。民間の力を借りて、これまでとは違うタイプの観光列車を走らせることが出来れば沿線を取り巻く状況も変わるのではないか。
路線存続へ向け、出来うることは何か?
沿線住民の乗車を増やすことは、これだけのクルマ社会で今さら乗ってくれというのには無理があり、この手の施策の多くは失敗に終わっている。路線存続にまずは観光列車で活路を見出すしかない。
JR釧網線とJR花咲線は国内でも有数な自然環境の中を走る。JR釧網線は釧路湿原、丹頂鶴、流氷、駅温泉などを身近に体験することができる。また、JR花咲線はJR釧網線以上に日本離れをした自然景観に恵まれている路線である。湿原、湖、沼、原野、岬や海岸線などが目まぐるしい速さで現われ、エゾジカや丹頂鶴(時にはヒグマ)と遭遇できる頻度が高い路線である。
管理人は花咲線がこれまで観光活用されていないことに疑問を持っていたが、日経記事にもある通り、長距離を周遊するルートと、短距離を行き来するルートの二つのパターンをつくれれば魅力が増す。
長距離とは釧網・花咲両線をたとえば1日おきで走るようなトレイン・クルーズ型であり、車内で飲食もできる今流行のレストラン列車のようなものがいいのではないか。JR九州の観光特急に近いイメージであるが、あちらもキハ40の改造車を利用しているので、北海道もそれで十分ではないか(リゾート列車の借り受けや譲渡が可能ならそれにこしたことはないが)。
また、短距離コースは既存のノロッコ号や今年度から登場した「流氷物語号」のようなものでいいであろう。
もうひとつ忘れてならないのは鉄道ファン対策である。以前、釧路支社では彼らをターゲットにということで既存の気動車をオリジナルの国鉄色に戻し、集客を図っていたが、今後、廃車が進むキハ40の聖地として売り込んでもいいのではないか。千葉のいすみ鉄道は50年以上前の古い気動車で「急行」を走らせ、鉄道ファン以外にも大人気になっているが、急行時代の「しれとこ」や「ノサップ」、「ぬさまい」などのヘッドマークを付けて走らせれば人気が出るであろう。多層の客をターゲットにわざわざ乗りにきたくなるメニューを複数用意出来れば、地理的ハンディも解消できると思う。
北海道新幹線が開業して1年が経過したが、潤ったのは函館を中心とした道南圏であり、全道的には殆どプラス効果にならなかったようである。
アンケートによるとオホーツクは大幅なダウンということだが、道東、道北を含め、新幹線からの距離が離れるほど開業効果がなく、むしろマイナスに転じている。
新幹線効果を道内全域に波及させることで言えば、新幹線で来る人は鉄道への関心が高いので、道内各地の路線や駅、列車などが最上級のコンテンツになるはずである。しかしながらJR北海道に余力が無い状態なので、釧路や阿寒の観光協会などが中古の車両を調達し、企業の協力も得て観光列車用に改造し、運行はJR北海道に委託する方法がよいであろう。
鉄道によって点と点が繋がれば、新幹線開業効果の恩恵を蒙ることも可能となり、広域観光にも貢献できるはずである。