JRの「周遊きっぷ」が廃止、もう一度オールJRという原点に帰る時では

JRの「周遊きっぷ」が廃止、もう一度オールJRという原点に帰る時では

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JR旅客6社は15日、全国の観光地に設定されたゾーン内を自由に乗り降りできる割引券「周遊きっぷ」の販売を3月31日で終了し、全廃すると発表した。国鉄時代から販売されていた「周遊券」の仕組みが複雑だったことなどから、周遊きっぷは平成10年に67ゾーンの設定で販売が始まり、14年度には約13万枚を発行。しかし売り上げの落ち込みとともに周遊ゾーンも次々廃止され、23年度の売り上げは約4万8千枚だった。(2/15付 産経新聞

最近、周遊ゾーンが次々と廃止され、時間の問題と思っていたがやはりであった。国鉄時代からの周遊券の仕組みが複雑なので「周遊きっぷ」に切り替えたというが果たしてそれだけであろうか。

かつて周遊券には大きく分けると2タイプあった。ひとつは指定する周遊指定地2ヶ所以上をまわり、201キロ以上利用すれば割引になるオーダーメイド型の普通周遊券。もうひとつは決められたエリア(北海道や九州など)が乗り放題で行き帰りは複数のルートから選択できる云わばパッケージ化された均一周遊券(ワイドやミニ、ルート周遊券など)があった。

当初は普通周遊券のみであったが、使い勝手がよく、発券もスムーズな均一型周遊券が主流となった。たとえば首都圏から北海道へ向かう場合、「北海道ワイド周遊券」を利用すれば、有効期間20日間で38,600円(廃止時)、10月から5月までは2割引きであった(有効日数は何度か変更あったが博多発などは30日間も使えた)。期間中、道内の特急急行列車の自由席は乗り放題、周遊指定地の入口駅(函館など)までは急行自由席が追加料金なしで利用できるなど旅人に愛されたスタンダードきっぷであった。往復や片道航空機やフェリーが利用も可能な周遊券もあり、自由度が高く、若者の旅を牽引して来たともいえる。

JRとなり割引きっぷの見直しが行われたが、周遊券は分割民営化されたJR各社にとって厄介なチケットになっていたようだ。新たに登場した「周遊きっぷ」は周遊エリアは指定されているもののセミオーダーメイド型であるため発券に時間がかかり、仕組みも複雑で制限も多かった。JR各社の思惑が絡んでいる内容で、鉄道ファンでさえも食指が動かないきっぷになっていた。

管理人も実は一度も購入したことがない。みどりの窓口まで足を運んだが、専用用紙への記入が面倒で、発券に数日かかると言われた。何よりも駅員が扱いたくなさそうな表情なのがわかり、こちらも遠慮してしまった。

JR各社も周遊きっぷが登場した頃は駅貼りポスターで宣伝をしていたが、この10年間ぐらいは見た覚えもなく、多くの方はその存在すら知らなかったであろう。説明するまでもなく、利益配分の少ない周遊きっぷを販売するよりはJR各社は自社完結型のフリーきっぷなどに力を入れてしまう。しかし、それは利用者無視のJRの自己都合ともいえる。

たとえばJR東日本管内では東北・甲信越方面の割引きっぷや自社カードによるインセンティブは多々あるが、それ以外へ行くとなると何もない。関東エリアでは「行くぜ東北」のCMを流しているが、「行くぜ山陰」は容易ではないのだ。JR東系の旅行会社「びゅープラザ」の窓口で西日本方面の商品を探しても飛行機利用が大半で、山陽・九州新幹線を使った商品はJTBなど他社へ出向かないとお目にかかれないのが現状である。これは鉄道会社としておかしくないか。利ザヤが少なくても、どうして同じJRである「東海ツアー」の商品を売れないのであろうか。店舗が少ないJR東海まで足を運べというのは不親切である。

国鉄時代から続きJRグループで発売している全国縦断型のお得なきっぷとして「周遊きっぷ」以外には「青春18きっぷ」、「フルムーンパス」、「レール&レンタカーきっぷ」、「ジャパンレールパス」などがある。今後、これらのきっぷも整理が進むであろう。特にフルムーンなどは危ないのではないか。「ナイスミディパス」はいつのまにか消えている。

今後、新たな全国縦断型のJRフリーきっぷの発売はないのではないか。JRを地域ごとに分割したのはお上の都合であって利用者には何の責任もない。各社、自社内の売上げに奔走した結果、最近はオールJRという意識が薄らいできたような気がする。もともとJRは全国を網羅しているグループ企業である。それが「シマ」意識が強くなり、大局を見失っている気がしてならない。

JRは鉄道事業は儲からないからと不動産事業に熱心になるのもいいが、もう一度本業である鉄道の再興を考えていただきたい。オールJRで鉄道の魅力や優位性を訴え、欧州のようにカード1枚でJR各社割引になるようなマイレージ的なサービスやシニアだけではなく、若者や家族向けに思い切った割引をするなど新たな施策に期待したい。

このままでは長距離移動の座を高速バスやLCCなどに譲り渡すのも時間の問題である。国交省もJR鉄道事業の見直しを図り、柔軟に対応すべき時期に来ているのはないであろうか。周遊きっぷの廃止と直接関係がないかもしれないが、このままでは移動手段の選択から鉄道が忘れさられてしまう。

*このブログがなかなか面白い「青春18きっぷが存続している理由

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