あの帝国ホテルが30泊36万円の「サービスアパートメントプラン」を打ち出したところあっという間に満室となった。
料金もさることながら特典をいくつか挙げると①専属サービスアテンダント②駐車場無料③フィットネスセンター・プールサウナ無料④朝食用のパンサービス⑤本館1階(ランデブーラウンジ)でのコーヒー紅茶の無料⑥パソコンブースやミーティングルームが無料といった付加価値の高い内容が人気を呼んだのであろう。
コロナ禍以降、多くのホテルで「リモート・テレワークプラン」などど称して格安の長期滞在プランの販売を始めていた。ところが反応はあまり芳しくなかった。プランを提供したホテルはプレミアム系のビジネスホテルが多く、客室での巣篭りが中心、「コロナ疎開」的な要素も強く、感染者の多い都内でわざわざという面もあったのであろう。
ところが帝国ホテルのプランの場合、日本を代表するフルサービス型のシティホテルが提供するものである。フルサービス型とは泊まりだけではなく滞在するに当って普段の生活と変わらないサービス・ホスピタリティを保障しているホテルである。
大昔の話であるが、オペラ歌手の藤原義江は25歳から身体が不自由となり亡くなる77歳まで帝国ホテルに宿泊していた。ホテルに居れば日常の多くが事足りてしまう。そのためには帝国ならば1泊あたり3万円平均の対価が必要であったが、1万円ちょいで可能になってしまうのである。富裕層までいかなくて”プチエグゼ”クラスであれば支払可能な額であろう。
来客があればホテル内のミーティングルームやラウンジで商談ができるのも魅力でビジネスに優位にはたらくかもしれない。このプランには消費者心理をくすぐるものがある。客室が空いている今、帝国ホテルはいいところに目を付けたものだ。
帝国のアパートメントプランが人気と話題になって以来、都内の多くのシティホテルがこのビジネスに参入し始めている。たとえばホテルニューオータニ東京は日帰りから30泊まで幅広いメニューの「ワーケーションプラン」を打ち出している。
たとえば「新スーパーTOKYOCATIOM」はスタンダートルームに滞在し、30泊31日1日3食付で75万円と高めであるが飲食施設の多いオータニなので食に力を入れていることがわかる。
また京王プラザホテルは30泊16万円というというプラン「ホテル型サービスアパートメント」を発売した。館内のレストラン・ラウンジ・コンビニエンスストアで利用できるホテルクレジットも1人1泊あたり500円分付くので実質価格は13万円となる。2人利用でも料金は変わらないのでこれはお得なプランである。家賃感覚で過ごせるのではないか。アパートメントプラン以外にも「“暮らす”@theHOTEL」(*2/18現在満室)を発売。こちらは本館スタンダードルームが30連泊21万円で1室2人まで利用できて料金は変わらない。滞在中は館内レストランで人数分の朝食が提供される他、ソフトドリンク(1泊につき2回まで)、駐車場、会議室、新聞朝刊などのサービスが付くというもので帝国ホテルのサービスに近い。
有名シティホテルが長期滞在プランを競い合っているが今後も参入が増えそうである。
長期滞在はフルサービス型のホテルの強みがいちばん発揮できるジャンルである。
これをやられてしまうとホテル余りの現在、ビジネスホテルはきびしい状況が続きそうである。
コロナの感染状況が今後どうなるかは未知数だが、少なくとも今年いっぱいはインバウンドに期待は出来ない。
またビジネス客の国内需要の回復も時間がかかりそうである。シティホテルにとって不確定なGo ToトラベルやEatに依存するよりはホテルアパートメントプランの方が今は確実なようである。