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外資系ホテルの温泉地進出、旅館が守るべきものとは

これまで国内で外資系ホテルと云えば大都市部かビーチリゾートあたりが中心であったが、最近はスキーリゾートなどにも進出しており、風景も様変わりしてきていた。

今回、箱根の強羅温泉に進出するのは「ホテル インディゴ 」。
IHG(インターコンチネンタルホテルズグループ)の一員で、現在世界に80軒を展開しているという。グループの中では中の上ぐらいのブランドであるということだが、各ホテル、その地域の文化や特徴などを全面に打ち出し、それをホテルのデザインやアートワーク、レストランのメニューなどに反映させている。「1つも同じホテルは存在しない」という独自性がウリのようであるが、最近、増えてきている「交流型ホテル」とも云えるか。

今回の箱根進出、先に同じ強羅温泉に出店をした「ハイアットリージェンシー箱根リゾート&スパ」を意識してのことかもしれないが、いよいよ国内の温泉地にも外資系の「黒船」がやって来るようになった。これから人気温泉地を中心に増えていくであろう。

ところで、これまで国内の温泉地といえば、多くが地元資本であり、地域の団結力が強固といったイメージがあった。反面、外部からの参入を拒むような閉鎖的な面もあったが、既得権益で守られているという印象が強かった。
特に外部勢力の進出には敏感で、温泉権なども絡み、容易に進出することは出来なかったが、バブル期の過剰投資で多くの大型温泉ホテルや旅館が経営破たん、不良債権となった宿を格安で購入する業者も増えてきた。たとえば365日いつでも格安な同一料金で泊まれる伊東園や湯快リゾート、大江戸温泉グループなどが温泉街に進出した。これらは地元にとって最初の「黒船」であったかと思うが、温泉街のゴースト化を避ける意味でも、また地元にお金を落として貰うためにも様子見であるが、受け入れざるを得なかった。

外資系の温泉リゾートの場合は高級志向であり、前述した格安の温泉チェーンとは客層も異なる。食事別のホテル形式を取っているところも多いので、同列では扱えないが、温泉地に誕生するという意味では第二の黒船といえるのではないか。

外資による高級温泉リゾートホテルの進出で、その温泉地が元気になればよいが、ひとつ気になるのは料金体系にどう影響するかということである。強羅温泉に先に進出している「ハイアットリージェンシー箱根リゾート&スパ」を例に取ると、料金が平日と休前日、繁忙期によって大きく異なり、室料が3倍程度になっている日もある。

これは需要によって料金が変動する最近のホテルの料金体系を導入しており、驚くことではないが、温泉地の場合、既存の宿泊施設の多くが2食付のこれまで通りのシステムのものが大半である。旅館を中心にしたこれらの宿は休日前や繁忙期を除けば、基本料金があり、満室が予想されても料金が変わらないところも多い。最近は需要予測のアルゴリズムが発達し、そのシステムを導入している宿もあるが、温泉ホテルや旅館の場合、2倍や3倍になることはまずないのである。

もし、2食付の旅館が需要予測システムを取り入れて、毎日の料金が都市部のホテルのように目まぐるしく変わり、休前日は2倍や3倍になってしまったらどうなるであろうか。そこまで極端にならなくても、OTAサイトのように毎日、目まぐるしく料金が変ったら計画も立てずらくなる。

いつでも格安な同一料金で泊まれる温泉ホテルチェーンがある反面、料金が2倍、3倍と目まぐるしく変わる外資系のリゾートもある現状。その間にいる既存の温泉旅館などは、これからどう対応するのであろうか。
2食が付いて、大きく値上げすることなくやっている日本の温泉旅館は大変良心的であると思うが、最近は格安同一料金チェーンや外資系以外にも星野リゾートのような既存の価値観を破壊するようなところまで登場している。

今後、2020年も念頭に、日本の温泉旅館の中には儲け上手な外部のシステムの導入を考えたり、混雑日の思い切った値上げを考えるところも出てくるであろう。もし、都市部のホテルのように混雑日に大幅な値上げをすれば、信用を失うことにもなり、安易な導入には反対である。

目先の利益に走ることなく、これまで築き上げてきた長年の旅館のシステムを守る-その中でITや新しい手法は取り入れながらも顧客に迷惑が掛からないやり方で進んでいくべきであろう。星野リゾートなどは旅館にホテルの手法を取り入れているが、ホテルと旅館は別ものである。

 

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