観光ホテルチェーン道内大手の万世閣(胆振管内洞爺湖町)は20日、臨時取締役会を開き、同日付で浜野浩二社長(61)が代表取締役会長に退き、後任に長男の浜野清正執行役員(37)が就任する人事を決めた。東日本大震災で経営が厳しさを増す中、トップ交代で立て直しを図る。 (5/20付 道新)
このところ道内の大型温泉ホテルチェーン苦戦の話題が続く。先日、カラカミ観光が決算で大幅な赤字と一部施設の休館を発表(この件に関する拙ブログはこちら)したが、不振が続く万世閣も社長の交代を決めた。
管理人は今回の震災が起こらなくても、遅かれ早かれ同じ結果になったのではないかと思っている。その原因は、よく云われる旅行形態の変化だけでは片付けられない根深い原因があるからだ。
これまで道内の大型観光温泉ホテルチェーンは、利益を他に漏らさないため、旅館内に宴会場、スナック、カラオケや土産物売り場、大型温浴施設を設置し、すべて館内で消費できる仕組みになっていた。道内の温泉の特長として温泉街、いわゆる湯の町的なものが殆ど存在していないことは何度か述べてきたが、温泉街が形成しずらい理由のひとつに大型温泉ホテルの存在がある。
こういった類の宿泊施設は道外にも多く存在するが、バブル崩壊後、団体依存の多くが淘汰された。今、伊東園ホテルグループや湯快リゾートに二束三文で買い取られた豪華な宿の多くがそうである。
しかし、北海道の場合、団体旅行需要も大きいが、個人客も大型温泉ホテルチェーンに宿泊する比率が高い。大量のテレビCMや新聞広告で集客し、料金も手頃なため、家族連れ需要と外国人受入れで生き延びることができた。管理人はこのような観光ビジネスを「マスプロ・ツーリズム」と呼んでいるが、道内消費者の目も肥えてきている。これらのホテルは、安・近・短の象徴であるが、個人客を意識した高品質の宿に他が脱皮を図る中、ガリバーのような存在になってしまった。
大型温泉ホテルチェーンは、一代で築き上げたオーナー会社が大半。それも歴史がない。自分たちのことだけで頭が一杯なので地域全体として事を考えるのが得意ではない。高度成長期の「大きいことはいいことだ」のチョコレートCMと同じ発想でこれまで来た。
一ヶ所ですべて揃えて提供する囲い込みの時代は終わった。これは百貨店と共通するテーマではなかろうか。今のデパートは「百貨」の看板は降ろし、専門店化しながら顧客需要を省み、良質なものを提供できるように努力している。ホテルも宿泊客を夕食前や夕食後に外へ出した方が地域全体が循環するはずだが行く場所がない。
先日の日経新聞北海道版に、万世閣新社長のインタビューが載っていたが、「滞在型」に力を入れるという。果たして今の大型温泉ホテルチェーンでその需要があるであろうか。ワンマン体制の会社で、従業員も都会から離れた場所に長時間拘束され、賃金も安ければ、ホスピタリティなど提供できるはずがない。
外国人受入れや滞在型も大切だが、その前に足元をもう一度見直す必要があるであろう。本質が変わらない限り、何も変わらない。
管理人様
こんにちは。5月20日の道新の記事を読みました。旅行の形態が「大勢で」から「個人で楽しむ」事にだんだん変化しているのに、一部の旅館やホテルはいまだに団体様歓迎、個人客は…という施設が多いですね。そういう所はたいてい、個人はおろか団体客にも温かみの無い施設と感じたものです。
しかし、万世閣は頑張っていたと個人的に感じていました。2年前に某地の万世閣に1泊しましたが、誕生月の事もあってか、部屋の冷蔵庫にケーキとバースデーカードが入っていた事、食事の際にスタッフからおめでとうございます、と声をかけられた事など割とおもてなしはしっかりしていたのを記憶しています。
私見が長くなりましたが、滞在型を掲げるならば、まずは施設内のカラオケスナックや土産店の充実より部屋や風呂などのハードをバリアフリー化させる必要があるのでは。そしてなによりプロ意識を持ちつつヒトとしての温かいもてなしの提供です。人口が減少する中、大箱の施設はいかに個人のお客様に受け入れてもらえるか、心の先読みを願いたいです。
管理人様
いつも楽しく拝見しています。
ご見解同意いたします。
やはりおもてなしの人づくりが大切ですね。
それと、道内行政機関にビジョンを描ける
リーダーが不在であったことも遠因であるのでしょう。
夕方からの歩行者天国などで温泉街を活性化する
方策は取られても良かったかもしれませんね。
淘汰され、廃墟のホテルが多くなる温泉街が
現れるのは悲しく寂しいですね。
リゾートオフィスなど新たな形態が生まれる
ことを期待します。
管理人様
こんにちは。いつも貴ブログで、勉強させていただいてます。
私だけかも知れませんが、滞在型ってどうしたらいいかイマイチ握めません。
単に連泊割引プランを販売するってことではないですよね。
当地は夏の涼しさは道内でもトップだと思います。
ですが、当地に避暑のニーズがあるかと言えば素直に「うん」とは言えない気がするんですよ。
街並みと言えるものもないですしねー。
値引きじゃない「何か」って何でしょうね?
全く思いつきません。
私はせいぜい、「毎月行く」とか、「毎年行く」って思っていただくのが限界かな。
努力が足りないんでしょうね・・・。
ではまた!
あさま山荘さん、こんばんは。
万世閣の誕生日の話は管理人も勉強不足で意外なかんじでした。旭岳に出来た頃、一度泊まっただけなので洞爺湖や定山渓の実際はわかりません。支配人の違いなどでも宿全体の雰囲気は大きく変わりますよね。
>大箱の施設はいかに個人のお客様に受け入れてもらえるか、心の先読みを願いたいです
おっしゃる通りですね。大箱でも心構えひとつであると思います。従業員もお客様も共に共感・満足できるようなホテルづくりができればきっと変わるはずです。要は意識の問題です。
rkさん、いつもコメントありがとうございます。
温泉街の問題は北海道の宿命かもしれません。歴史のなさがそのまま出てしまっていますが、逆に云えば、新しい発想で温泉街をつくることも可能です。歩行者天国に地元生産者の出店や屋台など北海道らしさを演出するだけでも違うと思います。
温泉街が廃墟化して行くことだけは避けなければなりません。廃墟化寸前でギリギリで奮闘している糠平温泉や川湯温泉、温根湯温泉などありますが、地域リーダーの不在も大きな要因かもしれません。
大きな温泉郷は地域の中でも自主独立の傾向があり、外から入りにくいという問題もあります。
さんすいかくのたなかさん、コメントありがとうございます。
滞在型といってもいくつかに分類されます。①避暑地・リゾートなどの滞在(ニセコ・富良野など)②都市型の滞在(札幌や函館・釧路などの生活環境が整っている場所③田舎暮らし志向で何もないところでノンビリ暮らす滞在・・・大きく分けるとこの3タイプでは。
本来であれば温泉地などの湯治も含まれますが、北海道の場合この部分が弱いのです。
>毎月行く」とか、「毎年行く」って思っていただくのが限界かな。
これは重要だと思います。滞在ではなくても、リピータが増えることは滞在型と同じ意味があると思います。管理人は道内の某所でこれを繰り返すうちに、夏休みの1週間滞在などを始めました。
2連泊でも春夏秋冬と来てくれれば同じではないでしょうか。それならどんな立地でも可能だと思います。