「Sおおぞら」火災事故 緊急時に問われる乗務員の判断力

「Sおおぞら」火災事故 緊急時に問われる乗務員の判断力

ozora

,釧路駅に停車する「Sおおぞら」

煙が車内に充満する中、車外への避難を促すアナウンスは最後まで流されなかった。上川管内占冠村のJR石勝線トンネル内で27日夜起きた列車火災。乗客は「指示に従っていたら、みんな死んでいた」とJR北海道の対応に不満を訴えた。(5/29付 道新

石勝線トンネル内で起きた「Sおおぞら」の脱線火災事故。管理人は何十回と乗車している路線・列車であり、火事が起きたトンネルも見当が付くので非常にリアルにこのニュースを受け止めた。

現場では車掌からの車外避難指示はなく、乗客が先に脱出したと云う。JR北のマニュアルでは、火災の場合は速やかに乗客を安全な場所に避難させるとあるそうだが、今回の場合は煙のみで、気動車の煙突から出る煙だと乗務員が勘違いしたようだ。また、山間地のため、無線や携帯が繫がらず、指令との連絡も途絶えたとある(無線はトンネル内では繫がらないのか?)。

今回の事故は、管理人が3月11日の震災の際、青森から函館行の「S白鳥」乗車中に体験したことと共通点がある(その時のブログはこちら)。

地震発生時、列車は江差線の渡島当別-茂辺地間を走行中であった。急停車した場所は灯台がある岬(葛登支岬)の下あたりで切り立った斜面上だ。その下は松前国道と海が迫っている。余震の度に車両は揺れ、さらに16時半頃から引き波が始まり、いよいよ津波が押し寄せてきた。

車掌からは「安全確認が取れるまでここに停車します。この先の茂辺地駅は海抜が低いため、列車が津波に襲われる危険があり、先へ進むことができません」というアナウンス。車掌は2名乗車していたが、車掌室に様子を見に行くと、指令との連絡は取れず、携帯を使っているが地震直後のため、携帯も繫がらない。つまり、情報が入ってこないのだ。

列車は5時間以上停車した後、徐行で動き出し、茂辺地駅に停まった。車掌から「車両からは降りないで下さい」のアナウンスが。ところが、某団体ツアーのシニア客が駅前に停まっていた貸切バスに乗るため下車。その後、地元客と思われる人たちが次々と降りて行った。

管理人は車掌に問い質したが、「降りないで下さい。降りるのは自己責任です。降りても津波で道路が閉鎖されているので動けませんよ」という答だった。

このあたりのやり取りは、前ブログで紹介しているが、函館港にもっとも高い津波が押し寄せた午後9時頃、海抜が低く、危険だという茂辺地駅まで運転した理由が未だにわからない。函館駅構内に指令があるとすれば津波で避難したはずである。

詳細はわからないが、車掌は指令との連絡も取れない状態であり、状況も把握できていなかったことは間違いない。「降りないで下さい」と言っておきながら、乗客が先んじて降りだしたことは、今回の石勝線事故と共通している。J北の場合、指令所が札幌だけなのか各支社ごとにあるのかわからないが、緊急時には現場の判断が優先される。特に車掌の判断力が問われるところだ。

北海道の鉄路は石勝線のような人里離れた路線が多く、気象や自然が原因の突発的なアクシデントも起きやすい。これまでも何度かヒヤヒヤした経験があり、ローカル線の多くはワンマン運転だ。乗務員の適切な対応(危機管理能力)が求められる。

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