平成22年5月21日から運航を開始した落石ネイチャークルーズの乗船客数が28日、3,000人に到達した。落石ネイチャークルーズ協議会(会長・同漁協浄土昭雄専務)は、これを記念して、この日の乗船客21人に記念品としてマグカップとハンドタオルを贈呈した。(根室新聞)
この時期、網走や紋別のオホーツク流氷船は外国人を中心にした多くの観光客で賑わっている。冬期の北海道観光の定番メニューであるが、一方で地味ながらじわじわと支持を増やしているのが根室半島を中心にしたネイチャークルーズである。
以前から羅臼などのホエール・ウオッチング船はあったが、根室管内の漁協が漁船を利用したクルーズを始めたのは4年前からである。漁協クルーズは歯舞漁協と今回紹介された落石漁協で実施されているが、拙ブログでも根室市や各漁協の取り組みをスタート時に紹介させていただいている(「歯舞漁協の取組み」・「『落石ネーチャークルーズ』は通過型の根室観光を変えるかもしれない」。
スタートから4年が経過したが、利用者は順調に伸びているようで、記事によると「当初年間350人を目標に始まった同クルーズは初年度から576人が乗船、23年度は785人、24年度は891人と、順調に乗船客数が増加し、28日、21人が乗船し、総乗船客数3,016人となった。」とある。注目すべきはその属性である。 当日は、イギリスのバードウオッチング・ツアーの客としてアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スイス、オーストラリアから13人、東京などから8人の計21人が乗船している。
オホーツクの流氷船は多くが中華系を中心としたアジア系なのに対し、こちらは欧米系が主流である。欧米に多いバードウオッチャーをターゲットに、市や支庁が海外でファンの集まるイベント会場まで出むき、積極的にPRした効果が徐々にあらわれてきた結果である。
根室半島は世界でもっとも野鳥の種類が多く、特に冬期はピークとなり、国内の野鳥ファンの間ではその存在をよく知られていた。風連湖の湖畔には「レストラン&コテージ レイクサンセット」というレストラン&コテージがあるが、野鳥ファンや写真を撮る長期滞在客でいつも埋まっている。管理人はバードウオッチングの趣味はないが、何度か足を運ぶうちに太平洋側と根室海峡側とでは全く異なる根室半島の多様な自然に惹かれて、数え切れないほど訪れている。
ネイチャー・クルーズは団体客中心の網走や紋別の流氷船と較べ、個人客とそれを目的に遠くから来たツアー客が殆どである。これまでの「知る人ぞ」の存在から外国人が訪れるようになったことで根室エリアの観光形態も変わってきている。インバウンドというとアジア系に目が行きがちだが、欧米系を満足させる素材が北海道には多々あることを忘れてはいけない。これまで根室といえば、納沙布岬のみの通過型観光地であったが、滞在者もじわじわと増えている。お決まりの北海道ツアーコースとは一線を画した硬派なホンモノ志向といえるのではないか。
残念ながら日本人旅行者も”体験型”が増えたとはいえ、アジア系観光客と同じく、いまだ物見遊山型から脱却できないでいる。その傾向はすぐに変わるとは思えず、このままかもしれないが、良質な旅や体験を求める観光客が根室を訪れてくれれば、北海道観光の質も少しずつ変わり、オリジナリティのある場所になるであろう。マス・ツーリズムとは異なる上質な観光形態の普及に期待したい。
コメントを書く
コメントを投稿するにはログインしてください。