北海道ブランドと老舗があるべき姿とは

北海道ブランドと老舗があるべき姿とは

函館市の老舗レストラン、五島軒が本州に初進出する。共同で店舗展開している伸和ホールディングス(札幌市)が7日、JR大宮駅直結の大型商業施設「ルミネ大宮」(さいたま市)に「洋食バル函館五島軒」を出店する。同社は札幌市内に五島軒の洋食バルを3店展開しており、ルミネ大宮店を皮切りに首都圏で多店舗化していく。(11/2付 日経新聞北海道版

五島軒といえば明治初期に創業した国内を代表する洋食店である。本店以外でもカレーなどを中心に函館市内各所に出店、マチに根付いたお手軽なレストランとしても営業を続け市民に愛されてきた存在である。

このところ首都圏のスーパーでも五島軒のレトルトカレーを見かける機会が増え、最近では大衆的なスーパーでも売られるようになっている。函館の老舗の味を全国にということで、拡大戦略を取り始めたようだが、道内で居酒屋チェーンなどを展開する伸和ホールディングスと共同で「洋食バル」という新しい形態で札幌に2店舗を展開、今回は初の首都圏進出ということになった。

レトルトカレーや札幌への進出、さらには積極的な道物産展への出店などで知名度は上がったかもしれないが、最近のやり方はマーケティング、ブランディングという観点から見ると疑問も感じる。たとえばレトルトカレーの全国での大量販売は五島軒ブランドの希少価値を薄める結果となり、全国展開をしてすぐに飽きられた花畑牧場を連想させてしまう。会社としてはレトルトで知名度を上げて、各地にレストランを出店しようという戦略かもしれないが、この「洋食バル」というネーミングもあまりにも安易でお粗末である。函館バル街や最近は○○バルという飲食店も増えているので、それに倣ったのであろうが、老舗が付けるネーミングではないのではないか。

五島軒の発祥はロシア料理のはずであり、どうして正統派で行こうとしないのであろうか?
洋食バルではチェーン系居酒屋と変わらないが、最近、流行のご当地系居酒屋のカジュアル洋食版を狙っているのかもしれない。日本橋の老舗洋食店「たいめいけん」なども意識しているのかもしれないが、まずは函館にあってこその五島軒である。

多店舗化した失敗した花畑牧場を見てもわかるが、道ブランドを道外に展開する際、希少価値を上手く醸成できないと失敗することが多い。たとえば北海道限定商品と道外向けのものを分けるなど緻密なマーチャンダイズが求められる。最近、銀座松坂屋の後継としてできた「銀座シックス」には石屋製菓の「ISHIYA GINZA」が入っているが、白い恋人関係は置かず、道内にはない全く独自な商品を販売しており、知名度を利用しながら新たな展開をはじめている。また、函館土産の定番となったチーズオムレットの「ペイストリースナッフルス」は、有楽町のどさんこプラザ脇に店舗を構えているが、相乗効果を狙った上手いやり方である。

函館といえば地元に密着したハンバーガーチェーンの「函館ラッキーピエロ」があるが、他所からオファーがあっても地元にこだわる姿勢は五島軒とは好対照である。函館に行ったら「ラッキーピエロ」に行ってみたいという人も多いようだが、レア感と消費者に軽い飢餓感を与えるぐらいでないと難しいような気がする。道内に本店のある寿司店の首都圏進出も目立つが、やはり地元で食べてのものではないであろうか。

「洋食バル」に来た客が、次は本店に行ってみたい気にさせることができるか、そこを考えないと多店舗展開は危険であり、100年ブランドの喪失につながる。

函館五島軒カレーGR-22S
函館五島軒カレーGR-22S

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