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長野県の温泉表記認定制度

長野県が先月、独自の温泉表示認定制度を設けた.資料を見るとなかなかのもので「康夫ちゃん、やるな」と思わせるものであった。
認定の際に検討する表示項目として、(1)利用する源泉の状況①源泉名②湧出地③湧出量④湧出形態(2)浴槽の温泉の状況⑤浴槽の種類とその状況⑥引湯の状況⑦加温・加水の有無⑧循環・掛け流しの状況(3)浴槽の衛生管理の状況⑨換水の状況⑩浴槽の清掃の状況⑪殺菌処理の状況⑫レジオネラ属菌の検査の状況(4)温泉の成分分析の状況⑭採取場所および分析時期-以上の内容からなっている。
温泉事業者は、保健所に認定申請書を提出すると所轄保健所が現地調査に伺い認定の適否の判定を行い適正な温泉には認定書が送られ5年間有効というものである。読んでおわかりだと思うが、これはかなり厳しい基準であり、かなりの自信がある温泉事業者でないと申請に尻込みしてしまう内容である。
認定制度は任意であるが、今後、自治体などが管轄する温泉表示の「基準」になる可能性があり画期的な内容といっていいであろう。
ところで北海道はというと一連の騒動の後、温泉地ごとの自主点検の結果を経済部観光振興課が発表している。公表内容は温泉地ごとに異なり、かなり細かいものから意味がわからないものまであり、かえって利用者を惑わしてしまう内容もあった。長野県とは発表の目的が違うので、マネをしろとは言わないが、観光立国・温泉大国を自負するならもう少し道がリーダーシップをとってもいいテーマではないか。
さて、長野県のこの制度自体はすばらしいと思うが、問題点がないわけではない。源泉を保有、昔ながらの施設、規模が比較的小さな温泉には有利であるが、湧出量が少ない温泉、お湯を組合で共同管理している温泉地、規模が大きい宿などにとってはどうしても不利になってしまう制度ともいえる。自家源泉で自然湧出、湯量豊富で加温も加水もしないでOKという温泉などそんなにあるものではない。
昨今、いい温泉の価値は「源泉掛け流し」である。言葉がひとり歩きしてしまった感があるが、いい温泉の価値は時代とともに変わる。
1970年代までは大浴場に大宴会場があるような大規模な温泉宿が好まれた。ところが1980年代に入るとアウトドアブームやOLの温泉回帰などの現象で露天風呂が必須となり、鄙びた宿が人気を集めるようになった。バブル崩壊後は疲れた人たちが癒しを求め、秘湯探し、お湯そのものに興味がいくようになった。
もともと温泉宿に内湯がある所は少なく、大浴場が全国で登場したのは戦後からであり、もっぱら外湯(公衆浴場)を利用したものだった。温泉にとってお湯そのものは重要な要素であるが、それがすべてではないはずだ。町並み・風情・宿・食事・コミュニケーションなどが上手く折り合ってのいい温泉のはずである。それらの要素がブレンドされ、非日常の「心地よさ」や「やすらぎ」を味わうことができる。
長野県は今回の発表に関し、『安全・安心・正直』をキャッチコピーにした。これは温泉表示だけでなく、観光産業全体、ホスピタリティ・プログラム全体にあてはまる表現である。
北海道では宿の評価制度を考えているようだが、提供する食事についての詳細を公表するなどの制度を設けたら道が目指す「食と観光」のPRに貢献するであろう。
温泉宿の献立に「冷凍食材使用」とは書けないはずである。

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