「なまら蝦夷」とは道内で小宿を営むオーナーたちが書いたガイドブックである。創刊は1996年、その後、2,3年おきに発行され今回で8号目を迎える。
この本に登場する宿は民宿、ゲストハウス、ペンション、ユースホステル風と形態は異なるが、共通していることは「男女別相部屋の設定(ドミトリー)」「比較的安価」「お客さん(旅人と呼ばれる)同士の交流がしやすい」「定員が少ない」などが挙げられる。「カニ族」時代から続く、北海道旅行の伝統を引継いでいるといってよいであろう。
大変参考になるのは、宿主たちによる観光ガイドである。主観も入っているので意見は分かれるかもしれないが、市販のガイドブックではフォローできない所も紹介されている。また、宿主たちのエッセー・コラムもそれぞれの人生観が見れて面白い。観光ガイドの部分だけでも役立つ。
エッセーを読んでいると旅人気質の変化が書かれている。たとえば、最近の旅人は優柔不断で、決断することができないことや、内向きで冒険できないことなどが紹介されている。旅に出ても現実から離れることが出来ないのであろう。
また、若い頃、ユースホステルを渡り歩いた「カニ族」たちで宿は賑わっているという。確かに道内のユースホステルでもシニア層が中心であり、いい齢をした大人が安宿に泊まるという現象が起きている。
「なまら蝦夷」に紹介されている宿、観光ガイドに出ている場所の多くは、時間をかけた個人旅行でしか体験できないようなものが多い。まさに「スロー・ツーリズム」の範疇であるが、旅の楽しみの原点がここにはあるような気がする。
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