昨夜の「NHK歌謡コンサート」は没後1年となる阿久悠氏の特集「歌よ時代を語れ」が放送された。つい先日も日本テレビ系ドラマで『ヒットメーカー 阿久悠物語』が放送され、「スター誕生」の番組光景を再現したシーンなどリアルタイムで育った管理人にはたまらなかった。
昨夜の番組は、小林旭、尾崎紀世彦、都はるみ、石川さゆり、山本リンダ、森昌子、ささきいさお、八代亜紀、五木ひろしなどが御馴染みの代表曲を披露、あとなぜかジェロと松浦亜弥が出演した。ジェロは、阿久氏がもっとも思い入れがあったといわれる鹿内孝の「本牧メルヘン」を唄ったが、これはいだだけなかった。この曲が醸す雰囲気は鹿内本人でないとダメと信じる。なんで本人が出演しなかったのであろうか。松浦は『わたしの青い鳥』を歌ったが、意外に上手いのにビックりした。
歌詞は間違えていたが。
そして今晩の目玉は何といっても北原ミレイの『ざんげの値打ちもない』だ。管理人は阿久さんの作品の中でもっとも好きな詩で、昨年のブログでもこのことは書いている。これまでの歌謡曲(流行歌)の常識を覆すようなショッキングで、斬新、且つ掟破りな歌詞である。これが流行った頃は小学生であったが、同じ頃、阿久さんの作品で森山加代子の「白い蝶のサンバ」も流行っており、歌って先生に叱られたものだ。
そして、「ざんげの値打ちもない」に幻の4番の歌詞があることがわかり、はじめてテレビで披露された。阿久さんサイドにも詞が残っておらず、北原ミレイが最初にレコーディングをした時の記憶を辿って復活をした。まずは1番から3番までの歌詞を
あれは二月の寒い夜 やっと十四になった頃
窓にちらちら雪が降り 部屋はひえびえ暗かった
愛というのじゃないけれど 私は抱かれてみたかった
あれは五月の雨の夜 今日で十五と云う時に
安い指輪を贈られて 花を一輪かざられて
愛と云うのじゃないけれど 私は捧げてみたかった
あれは八月暑い夜 すねて十九を越えた頃
細いナイフを光らせて にくい男を待っていた
愛と云うのじゃないけれど 私は捨てられつらかった
そしてこうして暗い夜 年も忘れた今日のこと
街にゆらゆら灯りつき みんな祈りをするときに
ざんげの値打ちもないけれど 私は話してみたかった
そして幻の四番である。
あれは何月 風の夜 とうに二十歳も過ぎた頃
鉄の格子の空を見て 月の姿がさみしくて
愛というのじゃないけれど 私は誰かがほしかった
これはスゴイ。どうしてカットされたのか理由はいくつか想像できるが、まずはリアル過ぎて暗すぎる。もうひとつは、当時の歌謡曲はテレビ向けに3分以内で終わるようにつくられたものが多い。四番までいくとかなり長くなるからなどが考えられる。
楽曲からすでに38年が経過したが、全く色褪せない。番組のタイトルの通り、阿久さんの楽曲は、時代を語っている。売れっ子の頃は詞が曲を喰ってしまうような気がし、あまり好きではなかったが、後になってそのスゴさに気付いた。昭和の名人である。
なお、幻の4番歌詞は1971年東映映画「ずべ公番長・ざんげの値打ちもない」(大信田礼子主演・彼女は都倉俊一氏夫人なので阿久悠氏とは因縁をかんじる)の中で、北原本人が歌っているらしい。
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